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ドラマ『この素晴らしき世界』で「芸能プロ」社長の木村佳乃、夫・東山紀之はリアル社長に!

碓井広義メディア文化評論家
東山社長は何を招くのか?(筆者撮影)

ドラマでも映画でも、「代役」を務めるのは楽なことではありません。

元々は、他の俳優のために用意された役柄です。

うまく演じても「穴埋め」といわれ、失敗すればキャリアに傷がつきます。

ましてや『この素晴らしき世界』(フジテレビ系)の場合は主役です。

当初、体調不良で降板した鈴木京香さんの代わりが若村麻由美さんと聞いて、「よく引き受けたなあ」と感心しました。

”代役”若村麻由美さんの主演ぶり

主人公はパート主婦の浜岡妙子(若村さん)。

ある日、彼女は芸能プロダクションから驚きの依頼を受けます。

看板女優・若菜絹代(こちらも若村さん)のスキャンダルが発覚し、謝罪会見を開きたい。

しかし、本人はアメリカへと逃走してしまった。

姿形がそっくりの妙子に代役となって欲しい、というのです。報酬は300万円。

一度だけのつもりで会見を乗り切りましたが、結局、それでは終わらず……。

現在は、本物の若菜絹代が戻ってきたことで急展開。

妙子は予期しなかったトラブルやら危機やらに見舞われている状況です。

このドラマ、何より若村さんの主演ぶりが目を引きます。

「平凡な主婦」、「大物女優」、さらに「女優になりすました主婦」という3態を見事に演じ分けているのです。

誰かの代役などではなく、若村さんの堂々たる「主演作」と言えるでしょう。

木村佳乃さんは「芸能プロ」社長

そして、若菜絹代が所属する芸能プロダクションの社長・比嘉莉湖(ひが・りこ)を演じているのが、木村佳乃さんです。

創業社長の一人娘であり、いかにもお嬢さんっぽい、人の良さがにじむ莉湖を好演しています。

しかし、会社の実権を握っているのは古くからの幹部たち。

彼らは、自分たちの不祥事を隠ぺいし、それを明らかにしようとする「お嬢さん社長」を排除しようと躍起になっています。

一方、莉湖は持ち前の正義感と妙子たちの協力によって、経営者として「正しい道」を行こうとしています。

次は最終回。妙子や莉湖たちの戦いが、果たしてどんな決着を見せるのか。

現実との思わぬリンク

ドラマは、そのときどきの社会を映す鏡といわれますが、思わぬリンクが起きました。

『この素晴らしき世界』第8回の放送を夜に控えた、7日(木)午後のことです。

ジャニーズ事務所が、創業者である故ジャニー喜多川前社長の性加害問題に関する対応を説明する、記者会見を開いたのです。

その中で、藤島ジュリー景子社長の引責辞任と、所属タレントである東山紀之さんの「新社長就任」が発表されました。

妻である木村さんはドラマの中の芸能プロの「社長役」ですが、夫の東山さんは日本有数の芸能プロの「リアル社長」になったわけです。

あまりに多くの課題を抱えた、この事務所のかじ取りを託された形の東山さん。

記者会見での話しぶりは、ふとした瞬間、「役柄」を演じている俳優のようにも見えました。

経営者としての力量は未知数ですが、具体的に何から、どんなふうに進めようとするのか、注視していきたいと思います。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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