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朝ドラ『舞いあがれ!』が見せてくれた、「平常心」のスタート

碓井広義メディア文化評論家
ヒロイン・舞を演じる福原遥さん(番組サイトより)

NHKの連続テレビ小説『舞いあがれ!』がスタートしました。

主人公は、東大阪で町工場を営む家庭で育った岩倉舞。

祖母が暮らす長崎県の五島列島で「ばらもん凧」に魅せられ、大空への憧れを描き、パイロットを目指すのだそうです。

「第一印象」を問われて・・・

さっそく記者さんから連絡があり、前作『ちむどんどん』との比較も含め、「第一印象」的な感想を求められました。

以下は、お話させていただいた概要です。

ヒロインの岩倉舞を演じるのは、福原遥さん。

NHK・Eテレの子供向け料理番組『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!』(2009年~13年)で大活躍していた、「まいんちゃん」を覚えている人も多いのでないでしょうか。

とはいえ、福原さんが本格的に登場するのは第3週あたりから。

しばらくは浅田芭路(あさだ はろ)さんが演じる、舞の少女時代が描かれます。

この浅田さん、とても達者な子役さんで、夏ドラマの『ユニコーンに乗って』(TBS系)でも、ヒロイン・佐奈(永野芽郁)の幼少期を好演していましたね。

『ちむどんどん』と比べて・・・

第1週の前半までを見たわけですが・・

『ちむどんどん』は、ご都合主義的なストーリーと共感しにくいキャラクター設定で、全体として〝粗雑な作り〟であったことは否めません。

また、『ちむどんどん』は、朝ドラの定番である、最初の幼少期を描くところからして、とにかく出演者たちを「個性的な人物」にしようと躍起になっていました。

ところが、それを押し出し過ぎすぎてしまい、逆に見る側の感情移入を妨げることに繋がったのです。

要はシナリオの問題だと思いますが、そうした視聴者との〝ボタンの掛け違い〟が最後までずっと続いてしまった印象ですね。

おだやかな「入り方」

今回の『舞いあがれ!』は、そういうこともなく、物語の立ち上がりとしては、おだやかな、いい「入り方」をしているのでないでしょうか。

奇をてらわない、いわば「平常心」のスタートです。

月曜からの第1週を見てきて、このドラマの雰囲気が伝わってくる感じがしました。

主人公は、少し体が弱いものの、大阪の町工場を営む父母の元で育つ、普通の少女です。

父の浩太(高橋克典)や母のめぐみ(永作博美)たちの、地に足をつけて生活している様子が丁寧に描かれており、安心して見ていられます。

第一回の冒頭。

一瞬ではありますが、舞の夢の中という設定で、大人になった主人公(福原)がパイロットになっている姿を見せたのも、うまかったですね。

この少女が「どうやってパイロットになっていくのだろう」と視聴者は思ったはずです。

また、しばらくは出てこない、福原さんを印象付ける効果もありました。

無理のない「自然な流れ」

東大阪での4人家族としての暮らし。転地療養先となる五島列島。大きな影響を受けそうな祖母(高畑淳子)との出会い。

そして、やがて発見する「空」への憧れ。

無理なところのない「自然な流れ」で、視聴者をじんわりと引き込んでいく物語が展開されるのではないかと、期待しています。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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