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『ホクサイと飯さえあれば』は、上白石萌音の「連ドラ初主演作」!

碓井広義メディア文化評論家
(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

上白石萌音主演の連続ドラマ『ホクサイと飯さえあれば』(2017年、毎日放送制作)が、再放送されることになりました。

今夜(23日)スタートするのは、関西ではMBS(毎日放送)。関東ではTBSじゃなくて、tvk(テレビ神奈川)です。

「女優・上白石萌音」の軌跡

上白石萌音さんといえば、今年の1~3月に放送された、ドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)が思い浮かびます。

そんな萌音さんに、最初に注目したのは、いつだろう。多分、初主演の映画『舞妓はレディ』(14年、周防正行監督)だったと思います。地方出身の女の子が、京都に出てきて、「舞妓さん」になることを目指すというお話でした。

あか抜けない、田舎っぽい少女だった主人公の西郷春子が、だんだん洗練されていく。その姿が、往年の名作ミュージカル『マイ・フェア・レディ』でオードリー・ヘプバーンが演じたイライザと重なりました。そんな「地方出身娘」の春子に、上白石萌音(鹿児島出身)という女優がドハマリだったのです。

次が、映画『ちはやふる』(16年、小泉徳宏監督)。ここでは、広瀬すず演じるヒロイン、綾瀬千早の「かるた仲間」でした。都立瑞沢高校の「かるた部」の部員、大江奏の役です。

都立なので、もちろん奏は地方出身ではなのですが、和服好きで、おっとり屋さんで、古典おたくというキャラクターは、渋谷とか六本木とかを闊歩するタイプの「東京女子」とは、見事に一線を画していました。

そして、萌音さんの知名度を一気に上げたのが、同じ16年公開の劇場アニメ『君の名は。』(新海誠監督)です。2次元のヒロイン・宮水三葉(みやみずみつは)に、声優として命を吹き込んだのは、萌音さんの演技力のなせる業でした。

三葉は、豊かな自然に囲まれた、岐阜県糸守町に暮らす女子高生で、古くからある神社の巫女。本当は東京に憧れているのだが、ままならない環境。まさに「地方出身娘」そのものであり、そのやわらかい方言もどこか懐かしく、萌音さんと三葉は完全に一体化していました。

連続ドラマ初主演作『ホクサイと飯さえあれば』

『君の名は。』の翌年、「連ドラ初主演」となったのが、今回再放送される『ホクサイと飯さえあれば』(17年、毎日放送制作)なのです。

主人公は上京したばかりの超内向女子、ブンちゃんこと山田文子(あやこ)です。ホクサイという名の「ぬいぐるみ人形」と一緒に、北千住のアパートで暮しています。

無類の「ごはん好き」ですが、食事は断然「お家(うち)ごはん」のみ。自炊料理の食材を近所の商店街で手に入れ、自分で作るのが一番楽しいし、最も嬉しいという女子大生です。

しかも画面では、安くて、早くて、おいしい「ブンちゃん料理」を作るところは見せるのですが、食べているシーンは一切描かれないという、ちょっと変わった「DIYグルメドラマ」です。

このブンが、これまた、何ともいい味の「地方出身娘」で、一般的には「コミュ障」と言われそうな強い人見知りなのですが、自分の好きことには一生懸命で、一途で、健気でもあり、この後に登場することになるヒット作『恋はつづくよどこまでも』の七瀬につながっているのです。

というわけで、女優・上白石萌音の記念すべき「連ドラ初主演作」である『ホクサイと飯さえあれば』の再放送、大いに歓迎したいと思います。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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