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早く続きが見たい、再開を待ちたい、ちょっとクセになる「深夜ドラマ」とは!?

碓井広義メディア文化評論家
(写真:アフロ)

放送開始の延期や制作中断が目立つ4月クールの連ドラ。中にはスタートしたものの、途中で止まってしまった作品もあります。

早く続きが見たい、再開を待ちたい、ちょっとクセになる「深夜ドラマ」とは!?

不倫という古くて新しいテーマに挑む『ギルティ~この恋は罪ですか?~』

今期クールの連ドラの中で、最も早くスタートした一本が、木曜深夜の『ギルティ~この恋は罪ですか?~』(読売テレビ制作、日本テレビ系)でした。

ところが第3話まで放送したところで、突然の中断です。現在もまだ第4話が流れる日程は発表されていません。

このドラマ、ジャンルで言えば、バリバリの「不倫モノ」。ヒロインの荻野爽(新川優愛)は雑誌の編集者で、夫の一真(小池徹平)は広告会社に勤務しています。

爽は子どもが欲しいと思っているのですが、なぜか一真は受け入れてくれません。とはいえ、爽としては他に大きな不満もなく、一応平穏な結婚生活を送っていました。

しかしですねえ、この一真、アンジャッシュの渡部さんほどじゃありませんが、しっかり不倫してました。しかも、その相手が、爽の友人である瑠衣(中村ゆりか)であることを、爽が知ってしまいます。

えーと、瑠衣は2人が夫婦であることを知っており、一真は途中まで、瑠衣が「知っている」ことを、知りませんでした。やばいぞ、瑠衣!

そして実は爽自身も、高校時代の初恋の相手である秋山慶一(町田啓太)と、偶然ですが再会したりして。いえ、こちらのほうは、いきなり“恋の再燃”というわけではないのですが、当時、互いに好きなのに別れたという事情もあり、爽の気持ちは少しずつ揺れ始めます。

昨年、ロケバスの運転手さんとの結婚が話題となった新川さんは、生真面目な美人妻がピッタリ。また、「怖(こわ)カワイイ」とでも表現したい、小悪魔的な愛人を大胆に演じる中村さんもハマり役です。

この2人の“激突”を眺めるだけでも十分楽しめるのに、この先には、まだまだ危ない仕掛けが用意されているようです。

たとえば、爽の高校時代からの親友、若菜(筧美和子)。さらに秋山の妻、美和子(徳永えり)。どちらも、かなりの「ワケあり感」を漂わせており、爽や秋山の運命を、大いに左右する存在になりそうなのです。

新川、中村、筧、そして徳永。今後も、この4人の女性が物語を引っぱっていくことは間違いない。男どもは、村上龍さんの本のタイトルで『すべての男は消耗品である』というのがありましたが、彼女たちの手のひらの上で踊る小人(こびと)なのかもしれません。

何はともあれ、早く4話以降が見たいものです。

他者との距離ではなく、「距離感」が秀逸な『レンタルなんもしない人』

そして、もう1本、再開を待ちたいドラマが、水曜深夜の『レンタルなんもしない人』(テレビ東京系)です。第8話まで放送した時点で、止まってしまいました。

このドラマの主人公、森山将太(増田貴久)の「なんもしない」は、家の中でボーッとしているという意味でありません。

たとえば、レンタルした人(依頼人)と一緒に、「一人では入りにくい店」に行く。また「ゲームの人数合わせ」にも応じます。今年はダメでしたが、「花見の場所取り」とかもOK。

つまり、特定の人ではなく、「誰か一人分」の存在が必要な時、気軽に利用できるサービスなのです。しかも交通費と飲食代以外は無料。ただし、このレンタルさんは、ごく簡単な受け答えしかしません。そこにいるだけ。なんもしない。

原作は、「実在のレンタルさん」が書いたノンフィクションです。ドラマでは、契約を切られた雑誌編集者(志田未来)から、故郷に帰る前の「東京最後の日」を一緒に過ごして欲しいと頼まれたりします。

また、仕事でトラブルを抱えて出社するのが怖いという青年(岡山天音)につき合って、会社の周囲を2人で歩き回ったり。誕生日を一人で迎えたくないという女子大生(福原遥)とは、彼女の部屋でケーキを食べることになったり。

報酬を得るのが目的のお仕事ではなく、あくまでも無料の「サービス」なのです。とはいえ、相手の事情には踏み込まないまま、「簡単な受け答え」をしてくれる人が目の前にいることで、利用者は自分の気持ちを整理できたりする。「特定の誰か」ではないからこその距離感が、逆に救いとなるんですね。

主演の増田貴久さんが、飄々というか、淡々というか、つかみどころのないレンタルさんとして、何ともいい味を醸し出しています。そして妻の沙紀を演じている比嘉愛未さんも、不思議な夫を支える、懐の深い女性を好演。これまた、ぜひゴールまでを見届けたいドラマになっているのです。

そうそう、他者との接触が禁忌となっている昨今、「実物のレンタルさん」は、どこで、どうしているのだろう。ちょっと気になります。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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