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雨の休日には、なぜか「フォークソング」がよく似合う!?

碓井広義メディア文化評論家
筆者撮影

突然、少々古い本、週刊文春:編『フォークソング~されどわれらが日々』(文藝春秋)を入手したのは、明らかに大学のサークル(児童文化研究会、通称「ジャリ研」)の同期会に出たせいでしょう。気分がちょっと回顧的になっているってことです。単純な性格なので、すぐ影響される。それにしても、サブタイトルが「されどわれらが日々」って(笑)。

本の帯にいわく。<13組15人が語る「あの頃」と「現在」>。ああ、いるいる。懐かしい名前と、ほとんど歌詞を見ないで歌えてしまう曲の数々が並んでいます。

南こうせつ、りりイ(映画『さよなら、クロ』のお母さん役もよかった)、NSP(夕暮れになると、あのメロディが)、三上寛(ステージに立つだけでインパクト)、山崎ハコ(やまさき、なんだよね)、ビリー・バンバン、なぎら健壱(泣くほど笑えた「悲惨な戦い」)。

さらに、高石ともや(やっぱ「受験生ブルース」でしょ)、カルメン・マキ(と聞けば寺山修司を思い出す)、シモンズ(「恋人もいないのに」懐かしいねえ)、西岡たかし(名曲「遠い世界に」)、友川かずき(すぐに曲名が出てこない)、小室等(風貌変わらず、75歳!)。

この本の中で、ビリー・バンバンは「白いブランコ」が取り上げられています。しかし、私にとってのビリバンは、「さよならをするために」がベスト。72年に日本テレビで放送されていたドラマ『三丁目四番地』のテーマ曲でした。森光子が下宿屋のおかみさん。その子供に浅丘ルリ子と岡崎由紀(だったと思う)。そして下宿人に原田芳雄と石坂浩二がいました。

放送当時、私は地方在住の高校3年生だったわけですが、なぜか、このドラマに「東京」というものを強く感じました。下宿のセットの後方にまたたく街の灯りが、私にとっての東京のイメージだったのです。

かぐや姫の「神田川」(作詞:喜多条忠)を聴いたのは上京後、大学1年のころ。歌の中に銭湯が出てくる。当時は、東横線・日吉にあった、家賃6700円のオンボロ学生下宿(何しろ農家の物置小屋を改造したものだった)の住人でしたが、銭湯も結構ぜいたくで、毎日は行けませんでした。

この歌とは逆に、銭湯の前で彼女が出てくるのを待つという風景も、ごく普通に見られたもので・・・てな具合に、曲を聴けばその時代のアレコレを思い出します。音楽のイメージ喚起力って、本当に強い。

小室等さんの「雨が空から降れば」がラストに出てきます。そう、最後が小室さんとこの曲だというのは、なんとなく納得がいく。そして、作詞したのは劇作家の別役実さんだったことも、今思えば凄い。

 「雨が空から降れば

  オモイデは地面にしみこむ

  雨がシトシト降れば

  オモイデはシトシトにじむ」

困ったなあ、ちょっとお酒が飲みたくなってきた。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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