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気がつけば、「流行語大賞」の季節!?

碓井広義メディア文化評論家

「もう、そんな季節かあ」ということで、17日に、今年の「ユーキャン 新語・流行語大賞」(『現代用語の基礎知識』選)の候補、30語が発表されました。果たして、2016年はいかに“総括”されているのか?

・アスリートファースト

・新しい判断

・歩きスマホ

・EU離脱

・AI

・おそ松さん

・神ってる

・君の名は。

・くまモン頑張れ絵

・ゲス不倫

・斎藤さんだぞ

・ジカ熱

・シン・ゴジラ

・SMAP解散

・聖地巡礼

・センテンススプリング

・タカマツペア

・都民ファースト

・トランプ現象

・パナマ文書

・びっくりぽん

・文春砲

・PPAP

・保育園落ちた日本死ね

・(僕の)アモーレ

・ポケモンGO

・マイナス金利

・民泊

・盛り土

・レガシー

いろんな意味で面白いですね。そして、いくつかの「くくり」が出来そうです。

●人物・発言系

一番多いのは、勝手なネーミングをすれば、「人物・発言系」でした。

安倍晋三首相「新しい判断」、小池百合子都知事「都民ファースト」、トレンディエンジェル・斎藤司「斎藤さんだぞ」、サッカー日本代表・長友佑都「(僕の)アモーレ」、ベッキー「センテンススプリング」、広島カープ・鈴木誠也選手「神ってる」。

さらにNHK朝ドラ「あさが来た」のヒロイン・今井あさ(波瑠)「びっくりぽん」、匿名のお母さん(?)「保育園落ちた日本死ね」、川淵三郎・日本トップリーグ連携機構会長「レガシー(遺産)」、橋本聖子・リオ五輪団長「アスリートファースト」など。

言葉自体と、その発言をした人物の両方を、セットで眺めると興味深い。そして、こう並べてみると、「センテンススプリング」は結構インパクトありますね(笑)。

でも、それ以上に強烈だったのが、「保育園落ちた日本死ね」でした。もしも、これが大賞になったら、授賞式に誰を招くのか、気になります。

●コンテンツ系

次に、「おそ松さん」、「君の名は。」、「シン・ゴジラ」、「PPAP」、「ポケモンGO」などは、ヒット作、もしくは話題作という、いわば「コンテンツ系」です。

候補の30語に、ドラマやバラエティなどのテレビ番組関連は、朝ドラ「あさが来た」の「びっくりぽん」以外、入っていません。今年のテレビ界を象徴しているかもしれないのですが、ちょっと寂しい。締切りの時期もあるのでしょう。本当は、「逃げ恥」とかがあってもよかったと思います。

●出来事系

3番目は、「EU離脱」、「ジカ熱」、「パナマ文書」、「マイナス金利」、「盛り土」、「くまモン頑張れ絵」、「タカマツペア」、そして「SMAP解散」などで、これらは「出来事系」と呼べそうです。

後年、「ああ、そういうこと、あったよなあ」と思わせるものになるはずですが、熊本の地震などは、“振り返り”の対象ではなく、“現在進行形”であることを忘れてはいけません。

●現象系

そして4番目の「AI」、「歩きスマホ」、「聖地巡礼」、「民泊」、「トランプ現象」などは、まさに「現象系」でしょうか。

●造語系

5番目のくくりとして、上記の「歩きスマホ」もそうですが、「ゲス不倫」や「文春砲」といった、一種の「造語系」があります。このジャンルが刺激的で面白い。現象、出来事、人物などをズバリと一語で言い切る、”言いえて妙”な造語がもっとあると楽しかったな、というのが感想です。

最後に、「年間大賞語」の“個人的予測”ですが、「歩きスマホ」、「ゲス不倫」の2つを連勝複式で(笑)、挙げておきます。発表は、12月1日(木)午後5時だそうです。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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