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今月初旬まで開幕スタメンが有力だった三塁手が解雇へ。調停で確定の年俸も約6分の1しかもらえず

宇根夏樹ベースボール・ライター
J.D.デービス(サンフランシスコ・ジャイアンツ) Sep 3, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今月に入るまで、J.D.デービス(サンフランシスコ・ジャイアンツ)は、三塁手の筆頭候補だった。けれども、状況は一転した。今月初旬、ジャイアンツは、FA市場に出ていたマット・チャップマンと3年5400万ドルの契約を交わした。これにより、デービスは、身も蓋もない言い方をすれば、余剰人員となった。

 その動きについては、こちらで書いた。

「ジャイアンツと契約の三塁手は大学時代のチームメイトからポジションを奪う格好に。誕生日は1日違い」

「大物の加入でポジションを失った選手は、大物がそれまで在籍していた球団へ移る!?」

 もうすぐ、デービスは、ジャイアンツに解雇される。MLB.comのマリア・ガーダッドらによると、ジャイアンツは、アウトライト・ウェーバーにデービスをかけたが、獲得の名乗りを上げる球団は現れず、続いて、リリース・ウェーバーにかけたという。

 他球団から獲得されずに公示期間が終わると、前者のアウトライト・ウェーバーの場合、球団はその選手をマイナーリーグに降格させることができる。サービス・タイムが5年以上の選手は、降格を拒否して退団することも可能だ。デービスのサービス・タイムは5年を超えている。後者のリリース・ウェーバーは、文字どおり、公示期間の終了後に解雇(リリース)となる。

 通常、選手を解雇した球団には、交わしていた契約の支払いがそのまま残る。ただ、デービスがジャイアンツからもらえるのは、その約6分の1に過ぎない。

 今オフ、デービスは、年俸調停を申請した。デービスの要求額は690万ドル、ジャイアンツの提示額は655万ドルだ。調停の結果、デービスの金額が通った。ここでデービスを解雇すると、ジャイアンツの支払いは、満額の690万ドルではなく、30日分の約110万ドルとなる。調停によって確定した年俸に対する、このルールは、前の労使協定にはなかった。

 ジャイアンツに解雇された後、デービスは、どこかの球団に迎え入れられるだろう。いくつかの球団は三塁手が確定しておらず、デービスは、レフトと一塁も守ることができる。過去2シーズンは、2022年が115試合で12本塁打と出塁率.340、2023年は144試合で18本塁打と出塁率.325ながら、2019年は140試合で22本塁打と出塁率.369を記録している。また、出場75試合未満の2020年と2021年は、どちらの出塁率も.370を超えていた。

 もっとも、ジャイアンツからもらう金額と新たな契約の金額を合計しても、690万ドルに達する可能性は高くなさそうだ。

【追記:3/16】

 その後の動きについて、こちらで書いた。

「ドジャースとのマイナーリーグ契約を打ち切った投手とジャイアンツに解雇された野手の新球団が決まる」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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