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センターとDHと三塁手を加えてもジャイアンツの打倒ドジャースは前途多難!? 先発投手の離脱が相次ぐ

宇根夏樹ベースボール・ライター
トリスタン・ベック(サンフランシスコ・ジャイアンツ)Sep 30, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今オフ、サンフランシスコ・ジャイアンツは、4人の野手を手に入れた。総額の多い順に、ジョンフ・イと6年1億1300万ドル、マット・チャップマンと3年5400万ドル、ホルヘ・ソレーアと3年4200万ドル、トム・マーフィーと2年825万ドルの契約を交わした。

 マーフィーは控え捕手だが、あとの3人は、それぞれ、センター、三塁、DHのレギュラーとしてプレーする予定だ。イはリードオフ・ヒッターを務め、ソレーアとチャップマンは中軸あるいはそのすぐ後ろに位置するだろう。

 今年は、得点の増加が期待できそうだ。昨年の674得点は、ナ・リーグで2番目に少なかった。

 一方、ナ・リーグ4位の防御率4.12を記録した先発投手陣は、不安要素が大きい。

 エースのローガン・ウェブに次ぐ2番手と3番手は、カイル・ハリソンジョーダン・ヒックスになると思われる。昨年8月にメジャーデビューしたハリソンは、トップ・プロスペクトながら、まだブレイクはしていない。昨年は、AAAの先発20登板で奪三振率14.39と与四球率6.58、防御率4.66(他にルーキークラスで1登板)。その後、メジャーリーグの先発7登板で奪三振率9.09と与四球率2.86、防御率4.15を記録した。4年4400万ドルの契約で迎え入れたヒックスは、昨年までリリーバーとして投げていた。ヒックスについては、こちらで書いた。

「山本由伸を逃したジャイアンツは、平均球速100マイルのリリーフ投手を手に入れ、先発投手として起用」

 4番手と5番手は、確定していない。キートン・ウィントリスタン・ベックが有力だったが、先月下旬に、それぞれ、右肘と右上腕を痛めた。ウィンは大事に至らず、開幕に間に合う可能性もあるが、ベックは手術を受け、復帰は夏頃になりそうだ。さらに、ベックに代わる候補のショーン・ジェリーも、右肘に不具合が生じている。

 しかも、この3人とイーサン・スモールは、メジャーリーグ通算の先発登板が、ハリソンよりも少ない。メイソン・ブラックカイウェイ・テンカーソン・ウィゼンハントは、メジャーデビュー前だ。テンも、先月中旬に左の脇腹を痛め、調整は遅れている。

 ジャイアンツには、アレックス・カッブと、今オフのトレードでシアトル・マリナーズから獲得したロビー・レイもいる。カッブは、過去2シーズンとも145イニング以上で防御率3.90未満。レイは、2021年のサイ・ヤング賞投手だ。だが、2人とも、手術後のリハビリ中。今年のメジャーリーグ初登板は、早くても、カッブが5月、レイは7月あたりだろう。

 昨年、ジャイアンツは、ナ・リーグ西地区の4位に位置した。その上にいたのは、ロサンゼルス・ドジャース、アリゾナ・ダイヤモンドバックス、サンディエゴ・パドレスだ。なかでも、ドジャースは、100勝を挙げた前年を凌ぐメンバーを揃え、今年に臨もうとしている。

 FA市場には、ブレイク・スネルジョーダン・モンゴメリーの大物2人だけでなく、マイク・クレベンジャーマイケル・ロレンゼンも残っている。昨年、クレベンジャーは、131.1イニングで防御率3.77を記録した。ロレンゼンは、153.0イニングで防御率4.18。夏のトレードでフィラデルフィア・フィリーズへ移る前に限ると、デトロイト・タイガースで105.2イニングを投げ、防御率は3.58だった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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