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球団売却を発表した直後に、FAまで1年のエースをトレードで獲得する。2つの動きに関連はあるのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
コービン・バーンズ Oct 3, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 2月1日、ボルティモア・オリオールズは、25歳の2人と今年のドラフト指名権1つをミルウォーキー・ブルワーズへ譲り、それらと交換に、ブルワーズからコービン・バーンズを獲得した。

 バーンズは、過去3シーズンの先発93登板で562.2イニングを投げ、奪三振率10.83と与四球率2.42、防御率2.94とFIP2.92を記録している。サイ・ヤング賞を受賞した2021年は、167.0イニングで防御率2.43。2022年と2023年は、それぞれ、202.0イニングで防御率2.94と193.2イニングで防御率3.39だ。いずれのシーズンも200三振以上を奪い、与四球はその3分の1未満。現在の年齢は29歳だ。

 2021~23年の3シーズンとも160イニング以上を投げて防御率3.50未満は、ゲリット・コール(ニューヨーク・ヤンキース)とケビン・ゴーズマン(現トロント・ブルージェイズ)、バーンズの3人しかいない。

 一方、バーンズの交換相手のうち、ジョーイ・オティーズは遊撃をメインとする内野手、DL・ホールは左投手だ。それぞれ、2023年と2022年にメジャーデビューしたが、ブレイクには至っていない。2人とも、プロスペクトではあるものの、トップ・プロスペクトとは言い難い。例えば、ベースボール・アメリカは、昨年の開幕前に発表したプロスペクト・ランキングで、オティーズを全体95位、ホールを全体75位としていた。また、手放したドラフト指名権は、全体34位(暫定)だ。

 オリオールズは、将来に支障を来しかねないほどの多大な見返りを差し出すことなく、真のエースを手に入れたようにも見える。だが、バーンズは今年の秋にFAとなる。

 昨年3月、バーンズは、代理人をスコット・ボラスに代えた。さらに、年末には、ポッドキャストの「ファウル・テリトリー」において、バーンズ自身が来オフのFA市場に出ることを示唆している。だとすると、オリオールズは、バーンズを1シーズンしか保有できない。

 これまで、オリオールズは、総額2億ドル以上の契約を交わしたことがない。2015年のオフにFAとなったクリス・デービスを呼び戻した際の7年1億6100万ドル(2016~22年)が、球団史上最高の総額だ。この金額では、バーンズを引き留めることはできないだろう。

 もっとも、バーンズを獲得する直前に、オリオールズのオーナーは、球団を17億2500万ドルでデビッド・ルーベインスタインに売却することで合意に達した、と発表している。正式な交代はまだとはいえ、オーナーが代われば、方針や予算も違ってくる。ここから、オリオールズは、総額2億ドルあるいは3億ドル以上の延長契約をバーンズに申し出るつもりなのかもしれない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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