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トレードの交渉に失敗したのか。放出の噂が出ていたエースを、監督が開幕投手に指名する

宇根夏樹ベースボール・ライター
ディラン・シース(シカゴ・ホワイトソックス)Sep 29, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 結局、ディラン・シース(シカゴ・ホワイトソックス)は、トレードで移籍することなく、開幕を迎えるのかもしれない。ホワイトソックスのビート・ライター、MLB.comのスコット・マーキンによると、1月25日に、地元のボーイズ&ガールズ・クラブのイベントに参加したペドロ・グリフォール監督は、開幕投手にシースの名前を挙げたという。

 昨年の夏、ホワイトソックスは、トレード市場で売り手に回った。ロサンゼルス・エンジェルスにルーカス・ジオリト(現ボストン・レッドソックス)とレイナルド・ロペス(現アトランタ・ブレーブス)、ヒューストン・アストロズにケンドール・グレイブマン、ロサンゼルス・ドジャースにジョー・ケリーランス・リン(現セントルイス・カーディナルズ)、マイアミ・マーリンズにジェイク・バーガー、ニューヨーク・ヤンキースにキーナン・ミドルトン(現FA)を放出した。

 続いて、今オフは、シースにトレードの話が浮上していた。

 シースは、28歳の右投手だ。過去3シーズンの防御率は3.91→2.20→4.58と推移し、与四球率はいずれも3.65以上と高めながら、3シーズンとも165イニング以上を投げ、奪三振率10.85以上とFIP3.75未満を記録している。FIPは、フィールディング・インディペンデント・ピッチングの略。ざっくり説明すると、守備の要素をできる限り排除した防御率だ。

 エースとまではいかなくても、ローテーションの2番手として、シースを欲しがる球団は少なくないはずだ。しかも、FAになるのは、2025年のオフだ。あと1シーズンではなく、2シーズンにわたって保有できることも、球団には魅力となる。

 ホワイトソックスは、いくつかの球団と交渉を行ったが、おそらくは、どの球団とも、交換要員の折り合いがつかなかったと思われる。

 ただ、ホワイトソックスとしては、売り急ぐ必要はない。この夏にトレードで放出しても、大きな見返りを得るチャンスはある。現時点と比べると、保有期間は短くなるものの、2024年と2025年のポストシーズン進出(とその先)に向けた補強、という点は変わらない。さらに言えば、いくつかの球団において、先発投手の怪我や不調が発生し、現時点より需要が高まっている可能性もなくはない。

 今オフ、ホワイトソックスは、シースの見返りにどんな選手が手に入れられそうなのかを確かめるため――その見返りが十分であれば、トレードを成立させることも含めて――「観測気球」を打ち上げた、という見方もできる気がする。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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