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エンジェルスが3年3300万ドルでリリーフ投手を迎え入れる。ということは、今年勝つ気でいるのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
ロバート・スティーブンソン Aug 27, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ロサンゼルス・エンジェルスは、ロバート・スティーブンソンを手に入れたようだ。ジ・アスレティックのサム・ブラムらが、3年3300万ドルの契約で合意、と報じている。

 スティーブンソンは、来月に31歳となるリリーフ投手だ。ここ3シーズンは、167登板で156.1イニングを投げ、奪三振率10.59と与四球率2.76、防御率3.97。昨年6月にピッツバーグ・パイレーツからタンパベイ・レイズへ移籍後は、42登板の38.1イニングで奪三振率14.09と与四球率1.88、防御率2.35を記録した。

 MLB.comのアダム・ベリーの記事によると、レイズでカイル・スナイダー投手コーチと話し合い、スライダーの握りを変えたことが功を奏したという。スタットキャストは、新たな握りのこの球種を、スライダーではなくカッターとしている。そこに、平均97マイル近い4シームを交え、左打者にはスプリッターも投げる。

 スティーブンソンの前に、エンジェルスは、FA市場に出ていた4人の投手とメジャーリーグ契約を交わしている。ただ、いずれも500万ドル未満の1年契約。アダム・コレアリックと1年90万ドル、ルイス・ガルシアと1年425万ドル、アダム・シンバーと1年165万ドル、ザック・プリーサックと1年100万ドルだ。マイナーリーグ契約を除くと、野手との契約はない。トレードで獲得した一塁手のエバン・ホワイトも、メジャーリーグでプレーしたのは、2021年が最後だ。

 スティーブンソンは、セットアッパーとしてクローザーのカルロス・エステベスの前に登板するか、エステベスに代わってクローザーを務めると思われる。スティーブンソンとエステベスは、2021年から2022年の夏まで、ともにコロラド・ロッキーズで投げていた。

 ブルペンにスティーブンソンを加えたことからすると、エンジェルスは、今年、10年ぶりのポストシーズン進出をめざしているのだろう。そうではなく、捕手のローガン・オホッピーを核として――あるいは、オホッピー、遊撃手のザック・ネト、一塁手のノーラン・シャヌエルを核として――数年かけて再建を行うのであれば、スティーブンソンとの契約は理屈に合わない。

 スティーブンソンに続き、エンジェルスは、ここから何人かの選手を迎え入れるのかもしれない。今オフのFA市場は、動きが鈍い。2度目のサイ・ヤング賞を受賞したブレイク・スネルや、3シーズン続けて155イニング以上&防御率3.85未満(&FIP3.70未満)のジョーダン・モンゴメリーに、不振を脱してナ・リーグ8位のOPS.881を記録したコディ・ベリンジャーも、まだFAのままだ。ちなみに、この3人とも、スコット・ボラスを代理人としている。

 ただ、エンジェルスが補強すべきポイントは、一つにとどまらない。少なくとも、ローテーションと内野のコーナーはそうだ。

 昨年、20試合以上の先発マウンドに上がった5人のうち、今オフにロサンゼルス・ドジャースへ去った大谷翔平を除く4人は、防御率もFIPも4.10以上だった。また、三塁手のアンソニー・レンドーンは、3シーズン続けて100試合以上に欠場していて、今年の新人王資格を持つシャヌエルは、経験だけでなくパワーの不足が懸念される。マイナーリーグを含めても、プロとしてプレーしたのは昨年の51試合だけ。183打数で打ったホームランは、AAとメジャーリーグで1本ずつに過ぎない。

 スティーブンソンが加入するブルペンも、充実の顔ぶれとは言い難い。さらに、外野手のマイク・トラウトが健康を維持できるかどうかにも、疑問が残る。2021年以降の出場は、36試合、119試合、82試合だ。

 中途半端な補強では、前年と同じく、オークランド・アスレティックスのすぐ上の順位、地区4位ということになりかねない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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