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この球団が立て続けに2人の先発投手と契約を交わしたのは、エースをトレードで放出する布石なのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
コービン・バーンズ(ミルウォーキー・ブルワーズ)Sep 28, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 12月4日、ミルウォーキー・ブルワーズは、ウェイド・マイリーと再契約を交わしたことを発表した。2024年の1年契約に、2025年の相互オプションがついている。MLB.comのアダム・マッカルビーによると、2024年は年俸700万ドルとイニングに応じた最高250万ドルの出来高で、2025年のオプションは年俸1200万ドル(解約金150万ドル)だという。

 今シーズン、マイリーは、先発23登板で120.1イニングを投げ、防御率3.14を記録した。現在の年齢は37歳だ。

 また、マイリーとの再契約の直前あるいは直後に、ブルワーズは、別の先発投手、ジョー・ロスと1年契約で合意に達したらしい。ファンサイデッドのロバート・マリーが、メジャーリーグ契約、と報じている。

 ロスは、来年5月に31歳となる。メジャーリーグで投げたのは、2021年が最後だ。20登板の108.0イニングで、防御率4.17を記録した。最後の1登板はリリーフだが、実質的には先発登板だ。雨天によって途中で打ち切られ、翌日に続きが行われた試合で、再開直後から5イニングを投げた。昨年6月にトミー・ジョン手術を受け、今シーズンは、8月下旬からマイナーリーグで登板した。

 現時点のメンバーでローテーションを組むとすれば、コービン・バーンズフレディ・ペラルタ、マイリー、エイドリアン・ハウザーの4人に、2021~22年に福岡ソフトバンク・ホークスで投げたコリン・レイが有力だ。

筆者作成
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 昨オフ、レイは、マイナーリーグ契約でブルワーズに入団し、先発22登板とリリーフ4登板の124.2イニングで防御率4.55を記録した。そして、先月初旬に1年450万ドルの再契約を交わした。来シーズンの年俸は350万ドル。2025年は、年俸550万ドル(解約金100万ドル)の球団オプションだ。

 もっとも、エースのバーンズには、トレードの噂が出ている。サンディエゴ・ユニオン-トリビューンのケビン・エイシーによると、サンディエゴ・パドレスは、バーンズに興味を持っているようだ。ESPNのジェフ・パッサンは、ブルワーズが複数の球団と接触、と報じている。

 レイとマイリーを呼び戻しただけでなく、ロスも迎え入れたのは、バーンズがいなくなっても、少なくとも人数不足には陥らないようにするため、という見方もできる。

 バーンズは、2021年のサイ・ヤング賞投手だ。ここ3シーズンの計562.2イニングは4番目に多く、300イニング以上104人中、奪三振率10.83は10位、与四球率2.42は36位、防御率2.94は7位に位置する。年齢は、10月下旬に29歳となったところだ。来シーズンが終わるとFAになるので、ブルワーズは、今オフが売り時と考えているのかもしれない。延長契約を交わすほどの資金は、ブルワーズにはない。

 今オフ、ブルワーズは、バーンズと両輪を形成していたブランドン・ウッドラフを、ノンテンダーとしている。ウッドラフの場合、事情は少し異なるものの、潤沢な資金があれば、手放すことはなかったはずだ。それについては、こちらで書いた。

「この球団がノンテンダーFAとした3人中2人は、前年に35本塁打の一塁手と防御率3.05の先発投手」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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