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ポストシーズンで打率.389と出塁率.560、前日には守備でも活躍の新人をスタメンから外した結果は…

宇根夏樹ベースボール・ライター
エバン・カーター(テキサス・レンジャーズ)Oct 15, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 10月16日、テキサス・レンジャーズのブルース・ボウチー監督は、エバン・カーターに代えて、レフトにロビー・グロスマンを起用した。

 カーターは、9月にメジャーデビューしたルーキーだ。ポストシーズンでは、6試合ともスターティング・ラインナップに名を連ね、打率.389(18打数7安打)と出塁率.560を記録していた。二塁打4本とホームラン1本を打ち、6四球と1死球。前日のリーグ・チャンピオンシップ・シリーズ第1戦は、2点リードの8回裏、無死一塁の場面で、アレックス・ブレグマン(ヒューストン・アストロズ)の打球を好捕した。上の写真は、その直前だ。このプレーは、一塁走者だったホゼ・アルトゥーベが二塁を一度踏んだ後、踏み直さずに一塁へ戻ったことがビデオ判定で判明し、併殺となった。

 アストロズの先発投手が左腕のフランバー・バルデスだったことが、カーターを外した理由だと思われる。それまでの6試合は、いずれも右投手が相手だった。

 今年のレギュラーシーズンにおいて、カーターは、マイナーリーグとメジャーリーグを合わせて、対右は打率.302(391打数118安打)と出塁率.427ながら、対左は打率.242(91打数22安打)と出塁率.349。右投手からは45本の長打を打っているのに対し、左投手からの長打は二塁打1本しかなかった。メジャーリーグに限ると、対左は10打数0安打だ。

 カーターではなく、グロスマンを起用した結果は、思わぬ形で吉と出た。1回表、無死一、二塁の場面で、グロスマンの打球は、ホームベースの前でバウンドした。マウンドからバルデスが駆け寄り、グラブでは捕り損なったものの、即座に左手でキャッチ。併殺は無理にしても、グロスマンをアウトにするチャンスはあった。けれども、バルデスが一塁へ投げた球は、右へ逸れた。二塁走者が生還し、なおも、無死二、三塁。レンジャーズは、このイニングに4点を挙げた。

 また、3回表の途中にバルデスが降板すると、ボウチー監督は、その裏にグロスマンを下げ、カーターを出場させた。こちらは、守備も考慮した交代だろう。

 レンジャーズは、1点差に詰め寄られた――8回裏、ヨーダン・アルバレスにこの試合2本目のホームランを打たれた――が、5対4で逃げ切り、このシリーズを2勝0敗とした。ここまでのポストシーズンは7勝0敗だ。カーターは、ポストシーズン初出場からの連続安打こそ6試合で途切れたが、四球を選び、連続出塁を7試合に伸ばした。

 ポストシーズン1試合目からの連勝記録については、こちらで書いた。レンジャーズと同じく、無敗のアリゾナ・ダイヤモンドバックスは、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズの第1戦が始まったところだ。

「ポストシーズン5勝0敗のレンジャーズとDバックスは、ワールドシリーズまで駆け上がることができるのか」

 カーターについては、数日前にこちらでも書いた。

「ポストシーズン3試合で長打4本、12打席中10打席で出塁のルーキーは、来年デビューのはずだった!?」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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