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8-5-3の併殺で試合終了。ハーパーのアドレナリンが仇になった!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ブライス・ハーパー(左)とマット・オルソン Oct 9, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 10月9日、アトランタ・ブレーブスは、5対4でフィラデルフィア・フィリーズを下し、ディビジョン・シリーズを1勝1敗とした。

 ブレーブスは、8回裏にオースティン・ライリーの2ラン本塁打で逆転し、1点リードで9回表を迎えた。そして、8回表から投げていたA.J.ミンターが先頭打者のブライス・ハーパーを歩かせたところで、ミンターに代わり、ライセル・イグレシアスがマウンドに上がった。

 この交代のタイミングは――イグレシアスの登板がイニングの頭からではなかったのは――想定どおりだったと思われる。ハーパーは、昨年のディビジョン・シリーズ第4戦に打ったタイムリー・ヒットを含め、イグレシアスを通算10打数7安打、4本塁打、10打点とカモにしている。ミンターに対しては、通算15打数2安打、0本塁打、0打点だ。

 イグレシアスは、J.T.リアルミュートをセンター・フライに討ち取り、ニック・カステヤノスを打席に迎えた。カウント2-2からの5球目、カステヤノスが打ち返した球は、センター寄りの右中間へ伸びていった。

 センターのマイケル・ハリス2世は、この打球を追っていき、ジャンプして捕球。そのままフェンスにぶつかったが、倒れることなく二塁方向へ投げ返した。

 ハーパーが一塁に戻れば、2死一塁で、次の打者はブライソン・ストールだ。今年のポストシーズンは、4試合で14打数5安打(打率.357)。ワイルドカード・シリーズ第2戦のグランドスラムだけでなく、どの試合もヒットを打ち、いずれの試合でも打点を挙げている。この試合の直近2打席、3打席目と4打席目は、犠牲フライとシングル・ヒットだった。

 だが、ハリス2世が捕球した時点で、ハーパーは二塁を回っていた。一方、二塁手のオジー・オールビースは、ハリス2世からの送球にバウンドが合わず、捕ることができなかったが、その後ろには三塁手のライリーが走り込んでいた。ライリーが拾って投げた球は、二塁を踏み直したハーパーが一塁へ戻るよりも早く、一塁手のマット・オルソンのグラブに収まった。併殺が完成し、試合は終わった。

 イライアス・スポーツ・ビューローによると、8-5-3の併殺はポストシーズン史上初。また、ポストシーズンにおいて、試合終了の併殺に外野手が関わったことも、これまではなかったという。

 ハリス2世の好捕とライリーのバックアップもさることながら、この併殺は、ハーパーの走塁が最大の要因だ。いつも以上にアドレナリンが出ていた、ということだろうか。ハリス2世は、一塁ではなく二塁へ向かって投げたことからわかるように、ハーパーの動きが見えていなかった。

 第3戦は、舞台をフィラデルフィアに移し、10月11日に行われる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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