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球史に残る大炎上でもカーショウの次の登板予定は変わらず。その理由はカーショウだから…なのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
クレイトン・カーショウ(ロサンゼルス・ドジャース)Oct 7, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 10月7日に行われたディビジョン・シリーズの第1戦で、クレイトン・カーショウ(ロサンゼルス・ドジャース)は、初回に6点を取られ、1アウトしか記録できずにマウンドを降りた。

 これは、カーショウのキャリア・ワーストというだけでなく、ポストシーズン史上に残る大炎上だ。それについては、こちらで書いた。

「大エース2人の明暗。バーランダーは6イニング無失点、カーショウは初回6失点でKO」

 それでも、デーブ・ロバーツ監督は、試合後の会見で、カーショウが第4戦の先発マウンドに上がる、と語った。ロサンゼルス・タイムズのビル・シェイキンらによると、翌日にも「私にとって、最高の選択肢であり、唯一の選択肢だと思っている」と発言したという。

 将来、カーショウは、殿堂入りするだろう。ここまでの通算成績は、210勝92敗、防御率2.48。奪三振は2944、与四球は669だ。リーグ・ベストの防御率を記録したシーズンは5度を数え、サイ・ヤング賞には3度選ばれている。2年連続3度目の2014年は、MVPも受賞した。

 現在の年齢は35歳。最近は怪我が増え、ここ3シーズンとも125イニング前後ながら、各シーズンの防御率は、2021年が3.55、2022年が2.28、2023年は2.46だ。今シーズンの後半、8月以降の8登板も、3失点と2失点が1登板ずつ、あとの6登板は1失点以下だった。

 ドジャースがスウィープされ、第3戦でシリーズが終わらなければの話だが、カーショウが中4日で第4戦に投げることに、不思議はない。

 ただ、理由はそれだけではない気がする。

 今シーズン、ドジャースは100勝を挙げた。だが、規定投球回どころか、135イニングを投げた投手もいなかった。カーショウの先発24登板と131.2イニングは、どちらもチームで最も多かった。

 現在も、先発投手が揃っているわけではない。

 ダスティン・メイトニー・ゴンソリンは、夏に相次いで右肘の手術を受けた。フリオ・ウリーアスは、DVにより、先月上旬から制限リストに入っている。昨年8月にトミー・ジョン手術――2015年8月に続く2度目――を受けたウォーカー・ビューラーは、復帰に至らなかった。今シーズンは、9月上旬にAAAで1登板のみだ。

 7月下旬にクリーブランド・ガーディアンズから内野手のアーメッド・ロザリオを獲得した際に、ノア・シンダーガードを放出したのはともかく(翌月下旬、シンダーガードはガーディアンズに解雇された)、ドジャースは、エデュアルド・ロドリゲス(デトロイト・タイガース)を手に入れようとして、タイガースと合意に達しながら、ロドリゲスにトレード拒否権を行使されたらしい。その直後に、カンザスシティ・ロイヤルズから加わったライアン・ヤーブローは、基本的にロング・リリーバーとして投げている。移籍後は、リリーフ登板が9度、先発登板は2度だ。後者は2度とも5イニング未満で、2度目は9失点だった。

 第2戦は、ボビー・ミラーが登板する。第3戦は、ランス・リンが有力だ。

 ミラーは、5月下旬にメジャーデビューし、先発22登板の124.1イニング――どちらもドジャースではカーショウに次いで多い――で防御率3.76を記録した。リンは、7月下旬にシカゴ・ホワイトソックスから移ってきた。その後は、先発11登板の64.0イニングで防御率4.36。移籍前と比べると、防御率は2点以上も低い。

 ちなみに、昨年のディビジョン・シリーズは、ウリーアス、カーショウ、ゴンソリン、タイラー・アンダーソン(現ロサンゼルス・エンジェルス)が先発マウンドに上がった。4人とも、2022年のレギュラーシーズンは、先発20登板以上で防御率2.60未満だった。ただ、ドジャースは第1戦に勝ったものの、第2戦からサンディエゴ・パドレスに3連敗を喫した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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