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チャップマンのトレードは予定どおりだが、デッドラインの1ヵ月以上前は…。ロイヤルズからレンジャーズへ

宇根夏樹ベースボール・ライター
アロルディス・チャップマン Jun 29, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月30日、テキサス・レンジャーズは、コール・レイガンズロニー・カブレラをカンザスシティ・ロイヤルズへ放出し、交換にアロルディス・チャップマンを獲得した。

 レイガンズは、25歳の左投手だ。2016年のドラフトで全体30位指名を受け、昨年8月にメジャーデビューした。今シーズンは開幕ロースターに入り、6月13日にAAAへ降格するまで、ブルペンから登板していた。ロイヤルズでは、昨シーズンまで(と今シーズンの降格後)と同じく、先発投手として投げるだろう。早ければ、今シーズン中の昇格とローテーション入りもありそうだ。

 カブレラは、来月末に18歳となる、ドミニカンの外野手だ。

 チャップマンのトレードは、予定どおりと言っていいだろう。ロイヤルズは、開幕から黒星を積み重ね――3連勝以上は一度もない――すでに58敗を喫している。チャップマンの契約は1年375万ドルなので、今シーズンが終わるとFAになる。

 35歳にして、チャップマンの球速は再び上がっている。スタットキャストによると、4シームの平均球速は、昨シーズンが97.5マイル、今シーズンは99.4マイルだ。シーズン奪三振率も、10.65→16.26と上向いている。また、昨シーズンの被本塁打4本に対し、今シーズンは1本も打たれていない。チャップマンに目をつけていたのは、レンジャーズだけではなかったと思われる。

 今シーズンのトレード・デッドラインは、8月1日だ。それより1ヵ月以上も早く動いたのは、ロイヤルズからすると、少しでも見返りを大きくするためではないだろうか。7月末のトレードと比べると、チャップマンがFAになるまでにレンジャーズが保有できる期間は、1ヵ月長い。

 一方、デッドラインが近づけば、チャップマンの獲得に動く球団が増え、競り合いが起き、ロイヤルズの見返りが大きくなる可能性もある。ただ、それまでに、チャップマンは故障に見舞われるかもしれず、トレード・バリューが下がることもある。

 チャップマンの制球難は、解消されていない。過去2シーズンと同じく、今シーズンの与四球率も6.00以上だ。なかでも、6月17日と20日は、2登板で計12人に対して投げ、5人を歩かせた。シングル・ヒット1本を含めると、半数の打者に出塁された。ロイヤルズがデッドラインの近くまで放出せず、こういった登板が相次いだ場合、チャップマンに興味を抱いていた球団が獲得に二の足を踏む――あるいは買い叩こうとする――ことにもなりかねない。

 レンジャーズにとって、チャップマンはプラスになり得る。ただ、2016年の夏に、シカゴ・カブスがニューヨーク・ヤンキースから獲得した当時と同水準の投球は、望めない――レンジャーズもそこまでは期待していない――ような気がする。7年前のチャップマンは、移籍後の28登板で、奪三振率15.53と与四球率3.38、防御率1.01を記録した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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