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2年前の夏に続き、シャーザーは今夏もトレードで移籍するのか。メッツはまさかの低迷

宇根夏樹ベースボール・ライター
マックス・シャーザー(ニューヨーク・メッツ)Jun 24, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 2年前の夏、マックス・シャーザー(現ニューヨーク・メッツ)はトレード拒否権を行使せず、トレイ・ターナー(現フィラデルフィア・フィリーズ)とともに、ワシントン・ナショナルズからロサンゼルス・ドジャースへ移った。

 移籍前の19登板で防御率2.76(8勝4敗)に対し、移籍後の11登板は防御率1.98(7勝0敗)。ドジャースは、シャーザーが登板した11試合とも、勝利を収めた。

 ワールドシリーズには進めなかったものの、シャーザーは、ポストシーズンの先発3登板と救援1登板で防御率2.16を記録した。ディビジョン・シリーズの第5戦は、同点の8回裏にケンリー・ジャンセン(現ボストン・レッドソックス)が投げ、1点リードの9回裏はシャーザーが締めくくった。

 今シーズン、メッツは低迷している。6月27日を終え、36勝43敗。ナ・リーグ東地区首位のアトランタ・ブレーブスには16ゲーム離され、ワイルドカード・レースの3番手、ロサンゼルス・ドジャースとの差も、8.5ゲームと小さくない。28日に敗れ――ドジャースも黒星ながら、ブレーブスは白星を挙げ――ブレーブスとの差は17ゲームに広がった。

 MLB.comが6月28日に掲載した、アンソニー・ディコモの記事によると、いくつかの情報源が、適切な状況のトレードならシャーザーは拒否権を発動させずに受け入れる、と示唆しているという。

 適切な状況というのは、シャーザーが、ポストシーズンへ進める、あるいはワールドシリーズで優勝できる、と判断するチームへのトレードだろうか。

 また、メッツのオーナー、スティーブ・コーエンは、6月28日の試合前に会見を開き、「ここから浮上できない場合は、トレード・デッドラインの時点で決断する」と語った。今夏のトレード市場で、売り手に回る可能性があるということだ。

 もっとも、シャーザーのトレードが現実味を帯びてきた、とは思えない。

 今シーズンの13登板は、防御率3.95だ。決して悪い数値ではないものの、2015~22年の8シーズン中、防御率が3.00を上回ったのは、2020年の3.74しかなかった。現時点の奪三振率9.68も、2012年以降では最も低い。来月下旬、シャーザーは39歳の誕生日を迎える。

 一方、シャーザーがメッツと交わしている3年1億3000万ドルの契約は、今シーズンが2年目だ。各シーズンの年俸は、約4333万ドル。今シーズンの8月以降と来シーズンを合わせると、契約の残り金額は、5500万ドルを優に超える。今オフ、シャーザーは契約を打ち切ってFAになることができるが、そうはしないはずだ。

 買い手からすると、ここから予想される投球に対し、残る支払い額は高すぎるだろう。メッツが支払いの一部もしくは大半を負担すれば、金銭についてはクリアできるかもしれないが、その分、メッツが買い手に要求する見返りは大きくなる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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