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この球場のピッチ・クロックは他球場よりも速い!? 都市伝説なのか…

宇根夏樹ベースボール・ライター
シチズンズ・バンク・パーク Apr 7, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 フィラデルフィア・フィリーズの本拠地、シチズンズ・バンク・パークの試合は、ピッチ・クロックがゼロになるまでの時間が短いという。ジ・アスレティックのマット・ゲルブが報じている。

 その記事には、フィリーズの投手と野手に加え、他チームの選手のコメントも出ている。彼らは、他球場より「速い」と感じているという。

 これだけなら、「速い」と感じていない選手もいる、という可能性も皆無ではない。誰かが「速い」と言い出したことに、他の選手が影響を受け、それが広まったということもあり得る。

 ゲルブは、こんなデータも紹介している。スタッツ・パフォームによると、各球場におけるピッチ・クロックのバイオレーション(違反)は、シチズンズ・バンク・パークの頻度が最も高い。

 シチズンズ・バンク・パークに設置してあるピッチ・クロックが、何らかの原因――重力の違い、機器の精度など――により、他球場のピッチ・クロックよりも速く進む、ということではないらしい。

 ピッチ・クロックは、基本的に、捕手や球審から投手がボールを受け取った瞬間にスタートする。もっとも、自動的にはスタートしない。スタートさせるのは、MLB機構に雇われている、フィールド・タイミング・コーディネーターだ。

 シチズンズ・バンク・パークでは、他球場と比べ、フィールド・タイミング・コーディネーターがスタートのボタンを押すタイミングが早い、ということになる。彼らが操作している機器は、どの球場も、ダクトロニクス・オール・スポーツ5000シリーズ・コントロール・コンソールだ。

 シチズンズ・バンク・パークのピッチ・クロックが、実際に他球場より早くスタートしているとして、フィリーズとアウェーのチームのどちらにとって不利あるいは有利に働くのかは、判然としない。

 シチズンズ・バンク・パークで、フィリーズは81試合を行う。他のチームは、その10分の1未満だ。だが、フィリーズの選手は、シチズンズ・バンク・パークのピッチ・クロックに適応できれば、アウェーでは問題にならない。一方、アウェーの選手は、シチズンズ・バンク・パークのピッチ・クロックにとまどうかもしれない。

 また、その試合においては、フィリーズもアウェーのチームも同じ条件、という見方もできる。

 なお、フィリーズがシチズンズ・バンク・パークの前に本拠としていた球場では、こんな問題が取り沙汰されている。

「このチームでプレーした6人が脳腫瘍で亡くなっているのはホームの人工芝が原因!?」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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