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2010年代のエースが復活。35歳で初のサイ・ヤング賞もある!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
クリス・セール(アトランタ・ブレーブス)May 26, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 クリス・セール(現アトランタ・ブレーブス)は、2010年代を代表するエースの一人だ。

 2010~19年に、シカゴ・ホワイトソックスとボストン・レッドソックスで記録した防御率3.03(1629.2イニング)は、このスパンに1200イニング以上の54人中、クレイトン・カーショウ(ロサンゼルス・ドジャース)の防御率2.31(1996.0イニング)に次ぐ。奪三振率11.08と与四球率2.07は、1位と9位。K/BB5.37も、最も高かった。奪った三振の数は、与えた四球の5倍以上、ということだ。

 2010年の夏にメジャーデビューし、最初の2シーズンはリリーバーとして投げた後、2012年から2018年まで、155イニング以上&防御率3.45未満を7シーズン続けた。平均198イニング以上&防御率2.91だ。だが、サイ・ヤング賞は、一度も受賞していない。2012~18年の順位は、ア・リーグ6位→5位→3位→4位→5位→2位→4位と推移した。

 2020年の春にトミー・ジョン手術を受け、2021~23年は、3シーズンで計151.0イニングにとどまった。防御率は3.93だ。昨年末のトレードで、レッドソックスからブレーブスへ移り、今シーズン初登板の前日に、35歳の誕生日を迎えた。

 今シーズンのここまでは、復活を思わせる。10試合の先発マウンドに上がり、63.2イニングを投げ、奪三振率11.03と与四球率1.27、K/BB8.67、防御率2.12を記録している。なかでも、4月26日以降の6登板は、いずれも1失点か無失点。このスパンは、39.0イニングで奪三振率11.77と与四球率0.69、K/BB17.00、防御率0.69だ。

 とはいえ、サイ・ヤング賞を手にすることができるかどうかは、まだわからない。レギュラーシーズンは、3分の2が残っている。また、現時点の与四球率とK/BBはナ・リーグ1位だが、奪三振率は5位、防御率は4位だ。

 防御率のトップ3には、0.84の今永昇太(シカゴ・カブス)、1.75のレンジャー・スアレス(フィラデルフィア・フィリーズ)、1.75のレイナルド・ロペス(ブレーブス)が位置する。ナ・リーグでは、この3人とセールの他にも、3人が防御率2.35未満を記録している(5月26日の時点で、チームの試合数×1.0イニング以上)。必ずしも、防御率1位=サイ・ヤング賞ではないものの、ライバルは少なくない。

 なお、35歳以上のシーズン(6月30日時点の年齢)にサイ・ヤング賞を受賞した投手は、延べ16人を数える。ただ、初受賞に限ると4人、1957年のウォーレン・スパーン(36歳)、1959年のアーリー・ウィン(39歳)、1992年のデニス・エカーズリー(37歳)、2012年のR.A.ディッキー(37歳)がそうだ。

 スパーンとウィンは、1955年以前にもサイ・ヤング賞があれば、35歳未満で受賞していた可能性は高い。エカーズリーは、リリーバーとして投げ、サイ・ヤング賞とMVPに選ばれた。ディッキーは、ナックルボーラーだった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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