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ホームランを打たれた最速の投球!? 102.5マイルの投球が100.8マイルの打球になって飛んでいく

宇根夏樹ベースボール・ライター
チャズ・マコーミック/捕手はマット・タイス Jun 3, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月3日、7回裏に登板したベン・ジョイス(ロサンゼルス・エンジェルス)は、先頭打者のチャズ・マコーミック(ヒューストン・アストロズ)にホームランを打たれた。

 ジョイスが投げた6球目、102.5マイルの速球は、マコーミックのバットに捉えられ、初速100.8マイルの打球となり、右中間のスタンドへ飛んでいった。投球と打球のスピードは、スタットキャストによるものだ。なお、上の写真は、同じ試合だが、別の打席らしい。

 ジョイスは、この日がメジャーリーグ3登板目。それまでの2登板は、被本塁打だけでなく、失点もなかった。

 100マイル以上の投球の被本塁打は、今シーズン、4本目だ。最初の3本は、3月30日にハンター・グリーン(シンシナティ・レッズ)、4月12日にヨアン・ドゥラン(ミネソタ・ツインズ)、5月5日にグリーンが打たれている。

 ただ、ジョイスの102.5マイルは、この4球のなかで最も速かった。他の3球は、101.3マイル、101.4マイル、100.2マイル。いずれも、ジョイスの投球とは1マイル以上の差がある。

 また、2008年以降の「ピッチ・トラッキング・エラ」において、ホームランとなった100マイル以上の投球は、51球を数えるが、102マイル以上は4球しかない。アロルディス・チャップマン(当時ニューヨーク・ヤンキース/現カンザスシティ・ロイヤルズ)の2球とジョーダン・ヒックス(セントルイス・カーディナルス)の1球に、ジョイスの1球だ。

 それぞれの球速は、チャップマンの投球が102.6マイル(2016年6月18日)と102.8マイル(2017年8月13日)、ヒックスの投球は102.1マイル(2018年9月7日)。ジョイスの102.5マイルは、ホームランを打たれた3番目に速い投球――チャップマンの投球を除くと最速、あるいは2019年以降では最速――ということになる。

 102マイル以上の投球をホームランにしたのは、チャップマンの2球がカート・スズキラファエル・デバース(ボストン・レッドソックス)、ヒックスの1球はジェイマー・キャンデラリオ(当時デトロイト・タイガース/現ワシントン・ナショナルズ)だ。

 なお、ジョイスは、その前の2登板で、三塁打も二塁打も打たれていなかった。3登板目の被長打は、ホームランと二塁打の計2本。二塁打は、79.4マイルのスライダーをジェイク・マイヤーズにレフトへ弾き返された。

 ジョイスのメジャーデビューについては、こちらで書いた。

「エンジェルスに登場した豪腕の初登板は「12球中11球が100マイル以上」。これは新記録なのか」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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