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AAA未経験でメジャーデビューは珍しいのか。今シーズンのエンジェルスは2人ともそう

宇根夏樹ベースボール・ライター
サム・バックマン(ロサンゼルス・エンジェルス)May 26, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 5月26日、ロサンゼルス・エンジェルスは、ブルペンの投手を入れ替えた。サム・バックマンをAAから昇格させ、レイエス・モロンタをDFAとした(40人ロースターから外した)。

 バックマンは、2021年のドラフト全体9位だ。マイナーリーグでは、先発投手として投げていた。2021年はA+で5試合、2022年はAAで12試合、2023年はAAで6試合に登板し、それぞれの防御率は、3.77、3.92、5.81。結果を出しているとは言い難いが、速球の最速は100マイルを超える。将来は、メジャーリーグのローテーションに加わることを期待されているはずだ。

 昇格当日、バックマンは、3点ビハインドの8回表からマウンドに上がり、2イニングで被安打4本と与四球2、1失点(自責点1)ながら、4三振を奪った。ちなみに、スタットキャストによると、この日は、カッター、シンカー、スライダーの3球種を投げ、最速は97.8マイルのシンカーだった。

 今シーズン、エンジェルスからメジャーデビューした選手は、ザック・ネトに続き、バックマンが2人目だ。昨年のドラフトで全体13位指名を受けたネトも、AAAでプレーすることなく、4月15日にAAから昇格し、その日の試合に「8番・遊撃」として出場した。

 ネトとバックマンを含め、今シーズンは、ここまでに88人がメジャーデビューしている(5月26日時点)。そのうちの14人は、AAAを経験せずにメジャーリーガーとなった。マイナーリーグ自体を経験していない3人、吉田正尚(ボストン・レッドソックス)、藤浪晋太郎(オークランド・アスレティックス)、千賀滉大(ニューヨーク・メッツ)の3人を除くと、85人中11人なので、全体の12.9%となる。ざっくり言うと、8人に1人だ。

 エンジェルスと同じく、シアトル・マリナーズにも、AAA未経験でメジャーデビューした選手が2人いる。今月上旬にAAから相次いで昇格した、ブライス・ミラーホアン・テンの両投手がそうだ。けれども、マリナーズは、エンジェルスのような100%、2分の2ではない。マリナーズからメジャーデビューは3人。ホゼ・カバイェロは、ネトと同じ日にAAAから昇格し、ネトとは別の試合で、9回表に遊撃の守備についた。

 なお、昨シーズンのエンジェルスでは、メジャーデビューした8人中3人、チェイス・ソーセスライアン・アギラーリバン・ソトが、AAAの経験なしだった(ソーセスとソトは、今シーズン、AAAの試合に出場)。また、ローガン・オホッピーは、2021年にフィラデルフィア・フィリーズ傘下のAAAで6試合に出場しているが、エンジェルス傘下のAAAではプレーしていない。昨夏のトレードで、ブランドン・マーシュと交換にフィリーズからエンジェルスへ移り、そこからAAで29試合に出場した後、9月28日に「8番・捕手」としてメジャーデビューした。

【追記:5/29】

 エンジェルスが5月28日にメジャーリーグへ昇格させたベン・ジョイスも、AAAは未経験だ。プロ1年目の昨年に続き、今年もAAで投げていた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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