アルゼンチンがウクライナにシュペル・エタンダール攻撃機を供与する可能性
6月11日、アルゼンチンのスペイン語大手紙「インフォバエ」はアルゼンチンのミレイ政権が同国のフランス製シュペル・エタンダール攻撃機5機をウクライナに供与する計画だと伝えました。この5機はアルゼンチンが数年前にフランスの退役機を追加購入したばかりで現役復帰が難航している機材です。出典:infobae
現役復帰が難航している理由は、同機に使用されているイギリスのマーチン・ベーカー社製射出座席の火薬カートリッジをイギリスがアルゼンチンに禁輸しているからです。アルゼンチンとしては自国での復帰を諦め、フランスに返納してイギリスの協力の元に機体の再整備を行ってもらい、ウクライナに供与したほうがいいと考えたようです。しかし能力的に劣るシュペル・エタンダールを僅か5機のみの供与では、機種転換訓練に手間が掛かる労力の割にはあまり有効活用できず、実現するかどうかは疑問があります。
この5機のシュペル・エタンダールはフランスで近代化改修(SEM)を受けている機体ですが、それでもF-16やミラージュ2000と比べると能力的に大きく劣ります。シュペル・エタンダールは戦闘機ではなく攻撃機なので空対空戦闘能力は低く、特徴であるエグゾセ対艦ミサイルを運用できるという点以外では、ウクライナ軍が現在使っているSu-25攻撃機と同程度の使い道しかありません。
現状ではロシア海軍黒海艦隊は開戦初年度の2022年にズミイヌイ島の攻防戦で敗退して以降、積極的な海上作戦行動に出ておらず港に引き籠っているので、エグゾセ対艦ミサイルの出番はほぼ無いと思われます。するとシュペル・エタンダールを受け取るよりは、他の機種を優先したほうが良いようにも思われますが、アルゼンチンのウクライナ支援の象徴として政治的な意味を優先する可能性もあります。
アルゼンチン海軍シュペル・エタンダール攻撃機
- 1979年:フランスにシュペル・エタンダールを14機発注
- 1981年:最初の5機を引き渡し
- 1982年:4月2日、フォークランド紛争勃発。引き渡し5機で停止
- 1982年:5月4日、英駆逐艦シェフィールドを撃沈
- 1982年:5月25日、英輸送船アトランティック・コンベアーを撃沈(沈没は3日後)
- 1982年:6月16日、紛争終結。残り9機は以降に引き渡し
- 1989年:事故で2機喪失(8月1日、12月11日)
- 1996年:事故で1機喪失(5月29日)
- 2014年:初期購入分の残存11機の運用を停止
- 2016年:フランス海軍のシュペル・エタンダールが退役
- 2017年:フランスにシュペル・エタンダール退役機の5機譲渡を交渉
- 2018年:フランスに代金支払い
- 2019年:5機引き渡し完了
- 2023年:イギリスの射出座席部品禁輸により再整備が困難に
- 2024年:5機のウクライナ供与を検討
※購入19機(14機+5機)で事故喪失3機により16機だが、現役の機体は無い。最近フランスから追加購入した5機はイギリスさえ同意すれば現役復帰しやすいので、ウクライナ供与の候補となった。
※空母搭載用なので主翼の翼端が折り畳める。