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故障者が相次ぐヤンキースの投手陣。WBCで好投のこの投手を加えれば「救世主」となる!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
マット・ハービー Jul 24, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 開幕ローテーションに並ぶ予定だった、ニューヨーク・ヤンキースの投手5人のうち、現時点で故障していないのは、ゲリット・コールルイス・セベリーノの2人だけだ。

 昨夏にオークランド・アスレティックスから移ってきたフランキー・モンタスは、1月半ばに右肩の故障が報じられ、2月下旬に手術を受けた。昨年、158.1イニングで防御率2.44を記録したネスター・コーテズは、2月半ばに右太腿裏を痛め、USAのWBCロースターから外れた。今オフ、6年1億6200万ドルの契約で入団したカルロス・ロドーンは、今月上旬に左前腕の違和感を訴えた。

 コーテズは開幕に間に合いそうだが、MLB.comのブライアン・ホックらによると、ロドーンは2~3週間出遅れる見込みだという。モンタスのシーズン初登板は、早くてもオールスター・ブレイク後となる。

 ロドーンとモンタスに代わり、ローテーションに入るのは、ドミンゴ・ハーマンクラーク・シュミットだろう。

 昨年、ハーマンは防御率3.61、シュミットは防御率3.12を記録した。もっとも、どちらも75イニング未満だ。シュミットの場合、先発マウンドに上がったのは3試合に過ぎなかった。AAAの8試合を含めても、先発登板は11試合だ。

 彼らが揃ってローテーションの穴をきっちり埋めるかもしれないが、そうなるとは限らない。また、さらなる故障者が出た場合は、ブルペンから誰か、例えば、マット・クルックをローテーションに回すこともできなくはないが、こちらも人数が余っているわけではない。スコット・エフロスは、昨年10月にトミー・ジョン手術を受けた。トミー・ケインリールー・トリビーノは、開幕を故障者リストで迎えそうだ。

 先発登板のできるベテランを加え、「保険」をかけておいたほうがいいような気がする。

 であれば、この投手はどうだろうか。3月9日、マット・ハービーは、イタリアの先発投手として3イニングを投げ、キューバを0点に封じた。

 過去2シーズンはボルティモア・オリオールズに在籍し、一昨年は先発28登板で防御率6.27に終わった。昨年の登板は、マイナーリーグのみ。A+とAAの計3先発は、16.0イニングで3失点。AAAの10先発は、54.1イニングで防御率4.31を記録した。

 今月下旬に34歳となる年齢はともかく、キューバ戦の好投だけでは――シカゴ・ホワイトソックスの打者2人、ヨアン・モンカーダルイス・ロバートJr.も抑えたとはいえ――サンプルとして少なすぎる。過去2シーズンのスタッツも、復活を思わせるものではない。「保険」となるかどうかは、疑わしい。

 ただ、ハービーがニューヨークの球団と契約すれば、話題にはなるだろう。さらに、そこで好投すれば、大いに盛り上がるはずだ。

 今から10年前、ニューヨーク・メッツにいたハービーがスポーツ・イラストレイテッド誌の表紙を飾った時、そこには、「ダークナイト・オブ・ゴッサム」とあった。ダークナイト=バットマンの舞台であるゴッサム・シティは、ニューヨークをモデルとしている。

 そうなる可能性は低そうだが、ハービーがヤンキースに入団した場合は、ニューヨークに戻ってきたということで「バットマン・リターンズ」と謳うこともできる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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