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シーズン絶望となった「新遊撃手」の穴をどう埋めるのか。FA市場に残っている遊撃手を手に入れる!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ギャビン・ラックス(ロサンゼルス・ドジャース)Feb 27, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ギャビン・ラックス(ロサンゼルス・ドジャース)のシーズンは、始まる前に終わった。

 アクシデントが起きたのは、2月27日だ。6回表、無死一、二塁。ラックスは、走者として二塁にいた。ルーク・ウィリアムズが打ったゴロを三塁手が捕り、二塁へ投げた。三塁へ向っていたラックスは、送球を避けようとしてバランスを崩し、転倒。三塁に達したものの、右膝を痛めた。診断の結果は、前十字靱帯と外側側副靱帯の損傷。2023年は全休となるはずだ。MLB.comのホアン・トリビオによると、3月7日に手術を受けるという。

 今オフのFA市場には、ドジャースからFAとなったトレイ・ターナーを含め、大物の遊撃手4人――あとの3人は、カルロス・コレイアザンダー・ボガーツダンズビー・スワンソン――が揃ったが、ドジャースはその誰にも手を出さなかった。ちなみに、それぞれの動きは、ターナーがドジャース→フィラデルフィア・フィリーズ、ボガーツがボストン・レッドソックス→サンディエゴ・パドレス、スワンソンがアトランタ・ブレーブス→シカゴ・カブス。コレイアは、紆余曲折を経た後、ミネソタ・ツインズと再契約を交わした。

 ドジャースは、25歳のラックスを遊撃に据えるつもりでいた。

 メジャーリーグ4年目の昨年、ラックスが守ったのは、二塁が819.2イニングとレフトが205.1イニングで、遊撃は31.0イニングに過ぎなかった。だが、本来のポジションは遊撃だ。ラックスは、2016年のドラフト全体20位。この年、遊撃手では最初に指名された。また、2020年の開幕前のプロスペクト・ランキングでは、ベースボール・アメリカ、ベースボール・プロスペクタス、MLBパイプライン(MLB.com)のいずれでも、全体4位以内に挙げられた。

 現時点のメンバーからすると、ラックスに代わる遊撃手の筆頭候補は、1月にマイアミ・マーリンズから獲得した、ミゲル・ロハスだろう。34歳のロハスは、数シーズンにわたり、マーリンズでレギュラーの遊撃手としてプレーしてきた。ドジャースにとっては、思わぬ形でトレードが功を奏した、とも言える。

 もっとも、守備はうまいものの、ロハスは打てる遊撃手ではない。ホームランが二桁に達したシーズンは、11本の2018年だけ。過去2年のOPSは.715に届かず、昨年の出塁率は.283だった。ノン・コンテンダーのチームならともかく、ドジャースのレギュラーとしては物足りない。ラックスも、シーズン二桁本塁打はないが、昨年の出塁率は.346だ。マイナーリーグでは、2019年にAAとAAAの計113試合で26本塁打を記録している。

 とはいえ、FA市場に残っている遊撃手たち、ホゼ・イグレシアスディーディー・グレゴリアスアンドレルトン・シモンズアルシデス・エスコバージョナサン・ビアーでは、ロハスと比べてアップグレードになるとは思えない。ジャリクソン・プロファーが遊撃を守ったのは、2018年が最後だ。また、この時期に、トレードでレギュラークラスの遊撃手を獲得するのは難しい。

 ロハスをメインの遊撃手としつつ、内外野を守れるクリス・テイラーと併用するのが、現実的なプランではないだろうか。控えにはヨニー・ヘルナンデスがいるので、保険としてFAの誰かと契約を交わす可能性は、皆無ではないものの、高くはなさそうだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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