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契約を打ち切ってFAになったのは失敗!? 新たな契約は残っていた契約と同じ年数で金額はダウン

宇根夏樹ベースボール・ライター
アンドルー・チェイフィン Sep 28, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今オフ、リリーフ投手のアンドルー・チェイフィンは、FA市場に打って出た。昨年3月にデトロイト・タイガースと交わした2年1300万ドル(2022~23年)の契約には、今オフにオプト・アウトできる――選手が途中で契約を打ち切ってFAになれる――権利がついていた。チェイフィンはそれを行使し、FAになった。残っていたのは、今年の年俸650万ドルだ。

 今月、チェイフィンは、新たな契約を手にした。アリゾナ・ダイヤモンドバックスと1年契約で合意、と真っ先に報じたのは、ジ・アスレティックのケン・ローゼンタールだ。ダイヤモンドバックスのビート・ライター、アリゾナ・リパブリックのニック・ピエコロによると、1年625万ドルだという。今年の年俸は550万ドル。来年は725万ドルの球団オプションで、行使しない場合、ダイヤモンドバックスは解約金の75万ドルをチェイフィンに支払う。登板数に応じたボーナス(出来高)は、最高100万ドルだ。1年625万ドルは、チェイフィンが少なくとも得られる金額、550万ドル+75万ドルを表わしている。

 今年の登板が55試合に届かず、オフにオプションを破棄された場合、チェイフィンが手にする金額は、打ち切った契約の残額よりも25万ドル少なくなる。オプト・アウトした時点で望んでいたのは、複数年の契約、2年1000万ドル以上だったのではないだろうか。

 そうなっても、おかしくなかったはずだ。過去2年のスタッツは、2021年が71登板の68.2イニングで防御率1.83、2022年は64登板の57.1イニングで防御率2.83だ。防御率は2022年のほうが高く、与四球率も2.49→2.98と少し上がっているものの、奪三振率は8.39→10.52。スタットキャストとファングラフスの各データによると、ゴロ率も40%台半ばから50%以上に上昇している。シンカーと4シームはどちらも平均92マイル未満ながら、約10マイル遅いスライダーは空振り率が高い。今年のシーズン年齢(6月30日時点の年齢)は33歳だ。

 なお、他球団に複数年の契約を申し出られ、それを断ったという可能性は低そうだが、チェイフィンにとって、ダイヤモンドバックスは古巣だ。2011年のドラフトで全体43位指名を受け、2014年の夏にメジャーデビュー。2015年は66試合のマウンドに上がり、2017~19年は3シーズン続けて70試合以上に登板した。2020年の夏にトレードで放出されるまでの登板は、337試合を数える。ここから、移籍することなく40試合に登板すると、かつてのブルペンメイト、ブラッド・ジーグラーの球団記録に並ぶ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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