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42歳のスラッガーは「現役最年長の野手」として開幕を迎える。通算本塁打は459本

宇根夏樹ベースボール・ライター
アルバート・プーホルス(左)とネルソン・クルーズ Jul 29, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ネルソン・クルーズは、サンディエゴ・パドレスに入団するらしい。Z101デジタルのヘクター・ゴメスやESPNのジェフ・パッサンらが、契約の合意を報じている。

 あと数日で43歳となるアルバート・プーホルスが引退したため、プーホルスの約半年後に生まれたクルーズは、現役最年長の野手として開幕を迎える。その上には、同じ1980年生まれの左投手、リッチ・ヒル(ピッツバーグ・パイレーツ)しかいない。ヒルの誕生日は3月11日、クルーズは7月1日だ。2人とも2005年にメジャーデビューし、今年が19年目となる。

 それぞれの契約は、ヒルが1年800万ドル、クルーズは1年100万ドルだ。パフォーマンス・ボーナス(出来高)がついていたとして、それをクリアした場合でも、クルーズが手にする金額はヒルの半分に届かないだろう。

 昨年、ヒルは26試合に先発し、防御率4.27を記録した。クルーズは124試合に出場し、10本塁打とOPS.651に終わった。ヒルはローテーションの一角を担う予定だが、クルーズはレギュラーではない。DHとして、左打者のマット・カーペンターと併用される可能性が高い。2019年以降の4シーズン中、クルーズが守備についたのは1試合だけだ。ちなみに、カーペンターは2年1200万ドルでパドレスに入団した。契約金300万ドルと年俸350万ドルに、2024年の選手オプションが550万ドルだ。

 ただ、過去10シーズン(2013~22年)に、クルーズは誰よりも多くのホームランを打っている。このスパンに300本塁打以上は、329本のクルーズと315本のマイク・トラウト(ロサンゼルス・エンジェルス)の2人だ。直近の5シーズン(2018~22年)に記録したホームランも、少なくはない。12位の136本塁打だ。

 昨年10月、クルーズは左眼の手術を受けた。MLB.comのジェシカ・キャメラートらによると、視界不良に悩まされていたという。投球がよく見えるようになれば、あと41本の500本塁打には届かなくても、前年の2倍あるいは3倍のホームランを打つかもしれない。

 スタットキャストによると、昨年のホームランの平均飛距離408.3フィートと平均初速107.8マイルは、大谷翔平(エンジェルス)の407.6フィートと108.0マイルとほとんど変わらず、二桁本塁打の204人中、33位と9位に位置する。サンプル数は10本と少なめながら、まだパワーは失っていないことを窺わせる。

 なお、クルーズは7チーム中4チームでポストシーズンに出場し、テキサス・レンジャーズ時代には2年続けてワールドシリーズでプレーしたが、ワールドチャンピオンの一員にはなっていない。あと一歩のところで、ワールドシリーズ優勝を逃している。それについては、「ポストシーズンのホームランを4チームで打った選手のうち、ワールドシリーズ優勝を経験していないのは…」で書いたとおりだ。

 クルーズが入団するパドレスも、球団初のワールドシリーズ優勝を、まだ成し遂げていない。1984年と1998年にワールドシリーズへ進出したが、こちらはクルーズがいたレンジャーズと違い、2シリーズで1勝しか挙げていない。

 現役最年長のヒルについては、年末にこちらで書いた。

「43歳の投手は来シーズンが12チーム目。これまでに12チーム以上でプレーした選手は5人だけ」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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