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暗礁に乗り上げている3億ドル以上の契約における「最大の被害者」は誰!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
カルロス・コレイア Sep 29, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 カルロス・コレイアの契約は、いまだに成立していない。サンフランシスコ・ジャイアンツと合意した13年3億5000万ドルに続き、ニューヨーク・メッツとの12年3億1500万ドルも、暗礁に乗り上げている。

 これまでの経緯については、昨年末に「大型契約は二度死ぬ!? ジャイアンツに続きメッツも身体状態に懸念を抱き、早くも新たな球団が蠢動か」で書いた。代理人のスコット・ボラスとメッツは、契約の見直しについて話し合っているようだが、すべてが白紙に戻る――コレイアが他球団と新たな契約を交わす――可能性もある。

 この一件における最大の被害者を挙げるとすれば、エデュアルド・エスコバー(メッツ)ではないだろうか。

エデュアルド・エスコバー(ニューヨーク・メッツ)Sep 28, 2022
エデュアルド・エスコバー(ニューヨーク・メッツ)Sep 28, 2022写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 コレイアは遊撃手だが、メッツに入団した場合、三塁を守るはずだ。メッツの遊撃には、フランシスコ・リンドーアがいる。19年前にテキサス・レンジャーズからニューヨーク・ヤンキースへ移籍した、アレックス・ロドリゲスと同じパターンだ。当時のヤンキースでは、デレク・ジーターが遊撃を定位置としていて、ロドリゲスは遊撃手から三塁手に転向した(「この遊撃手はA-RODと似すぎ!? ドラフト全体1位、入団直前の破談、三塁転向…」)。

 昨年、リンドーアと三遊間コンビを組んでいたのは、エスコバーだ。マイアミ・ヘラルドのバリー・ジャクソンとクレイグ・ミシュによると、コレイアとメッツが合意に達した後、マイアミ・マーリンズは、エスコバーのトレードについてメッツに打診したという。コレイアの契約が問題なくまとまっていれば、メッツがエスコバーをマーリンズへ放出していた可能性は低くなかったと思われる。

 だが、コレイアが入団しなければ、メッツは、三塁手としてエスコバーを必要とする。マーリンズは、エスコバーの獲得から方向を転じ、2年1700万ドルの契約でジーン・セグーラを迎え入れた。ここ数年、セグーラは主に二塁を守ってきたものの、遊撃に加え、わずかながら三塁の経験もある。マーリンズは、セグーラに三塁を任せるつもりらしい。二塁にはジャズ・チザムJr.がいて、遊撃はジョーイ・ウェンデルが守ると思われる。

 一方、マーリンズ移籍が立ち消えになったエスコバーは、宙ぶらりんのままだ。コレイアが加わらなければ、今年も三塁を守るはずだが、コレイアが加わると、ポジションを奪われる。

 なお、エスコバーと対照的なのが、ブランドン・クロフォード(ジャイアンツ)だ。コレイアがジャイアンツに入団していたら、遊撃のポジションを譲ることになっていたはずだ。これまで、クロフォードはジャイアンツ一筋にプレーしてきた。2011年のメジャーデビュー以来、遊撃以外を守ったことはない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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