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レギュラーシーズンに5本塁打の選手が、ポストシーズンで5本塁打。どちらが本当の力なのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
ハリソン・ベイダー(ニューヨーク・ヤンキース)Oct 23, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今年のポストシーズンで最も多くのホームランを打っているのは、フィラデルフィア・フィリーズのリース・ホスキンスブライス・ハーパーに、ニューヨーク・ヤンキースのハリソン・ベイダーだ。3人とも、5本塁打を記録している。

 ホスキンスとハーパーの出場は11試合(これから増える)、ベイダーは9試合(これ以上は増えない)だ。ホームラン1本当たりの打数も、3人のなかでベイダーが最も少ない。それぞれ、8.8打数/本と8.6打数/本、6.0打数/本だ。

 それとは逆に、レギュラーシーズンにおける1本当たりの打数は、ベイダーが最も多く、本数自体も少なかった。ホスキンスは19.6打数/本で30本塁打、ハーパーは20.6打数/本で18本塁打、ベイダーは58.4打数/本で5本塁打だ。

 ベイダーは、ポストシーズンの9試合で、レギュラーシーズンの86試合で打ったのと同じ本数のホームランを記録した。1本当たりの打数は、10分の1近く少ない。ポストシーズンでは、レギュラーシーズンの約10倍のペースでホームランを量産したことになる。

 また、ホスキンスのシーズン30本塁打以上は、2018年に続く2度目だ。2019年と2021年も、27本以上を記録している。ハーパーの30本塁打以上は4度を数え、2015年は42本でタイトルを獲得した。今シーズンの本数が少なかったのは、中盤の長期欠場に起因する。

 2人のスラッガーと違い、ベイダーのシーズン本塁打は、最多でも2021年の16本だ。どのシーズンも、9試合で5本塁打以上のスパンはない。マイナーリーグで打ったホームランを含めても、年間の最多本数は2017年の23本――AAAで20本とメジャーリーグで3本――なので、25本に届かない。メジャーリーグとマイナーリーグを問わず、他の年はいずれも20本未満だ。

 ベイダーのアーチ量産は、パワーが開花したのではなく、あくまでも一過性と見るべきだろう。

 一方、ベイダーは、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズの第3戦に、センター・フライとなるはずの打球を捕り損ねた。グラブには入れたものの、落としてしまった。捕っていれば、3アウトとなり、イニングは終わっていた。エースのゲリット・コールは、次の打者にホームランを打たれた。

 ただ、こちらは、ライトを守っていたアーロン・ジャッジにも原因がある。2人が左右から走り、落下地点に入ったところではベイダーの前に位置したジャッジが、わずかにのけぞるように打球をやり過ごした。ベイダーは、完全にではなくとも、視界を遮られたのではないだろうか。

 ベイダーは、8月2日にセントルイス・カーディナルスから移籍後、9月19日まで故障者リストに入っていた。ジャッジとともに外野を守ったのは、レギュラーシーズンとポストシーズンを合わせて、20試合に満たない。

 ベイダーが好守の外野手であることに、疑問の余地はない。来シーズンも、隣がジャッジかどうかはさておき、ヤンキースでセンターを守るだろう。今オフ、ジャッジはFAになるが、ベイダーの契約は来シーズンまで残っている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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