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あのイグレシアスがトレードで移籍する!? クローザーのイグレシアスではなく…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ホゼ・イグレシアス(コロラド・ロッキーズ)May 9, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 コロラド・ロッキーズは、前半戦を43勝50敗で終えた。地区首位のロサンゼルス・ドジャースとは18.5ゲームの差があり、ワイルドカード3番手のフィラデルフィア・フィリーズとも6.5ゲーム離れている。

 この夏のトレード市場で、ロッキーズがファイヤー・セールを催すとは思えない。カイル・フリーランドアントニオ・センザテラクリス・ブライアントライアン・ミックマンは、いずれも長期契約の1年目だ。この4人とは、昨年10月から今年4月にかけて、それぞれ、5年6450万ドル、5年5050万ドル、7年1億8200万ドル、6年7000万ドルの契約を交わした。FA市場に出ていたブライアント以外は、延長契約だ。

 ただ、今オフにFAとなる選手は、積極的に売りに出すだろう。例えば、1年500万ドルで迎え入れたホゼ・イグレシアスは、その一人だ。

 今シーズン、イグレシアスは、遊撃のレギュラーとして、打率.301と出塁率.340、3本塁打、OPS.744を記録している。ホームラン以外の長打は、二塁打が20本だ。これだけでも悪いスタッツではないが、トレード市場において、さらに人気を高めそうなデータもある。

 通常、ロッキーズの打者には、「打者天国」のホーム、クアーズ・フィールドを離れても好成績を残せるのか、という疑問がついてまわる。今シーズンも、ロッキーズでプレーしている打者のほとんどは、ホームのスタッツがアウェーを上回る。下のリストは、シーズン200打席以上の9人だ。そのなかで、イグレシアスだけは例外。ホームと比べ、アウェーの打率と出塁率は100ポイント以上高く、OPSは200ポイント以上も上回る(0.001=1ポイントとして表記)。

筆者作成
筆者作成

 なぜ、ホームとアウェーでこれほどスタッツが違うのかはわからず、どちらも150打席前後なので、たまたまという可能性もあるが、例えば、イグレシアスは、シアトル・マリナーズにぴったりではないだろうか。マリナーズでは、二塁手のアダム・フレイジャーが、打率.237と出塁率.297、OPS.608と不振を囲っている。ホームランは、イグレシアスと同じ3本だ。パワーに関しては、イグレシアスも期待はできないものの、この点は問題にならない。マリナーズは、先月下旬にカルロス・サンタナを獲得していて、4月下旬から離脱しているミッチ・ハニガーも、今月中に復帰できそうだ。

 ちなみに、マリナーズには、ロサンゼルス・エンジェルスでイグレシアスとチームメイトだった、ジャスティン・アップトンもいる。また、どちらもア・リーグ西地区のマリナーズとエンジェルスは、ここから11試合を行う。今シーズン、ロッキーズとエンジェルスの対戦はないが、マリナーズへ移籍した場合、イグレシアスは大谷翔平と再会できる。

 昨シーズン、9月にエンジェルスから解雇されたイグレシアスは、数日後にボストン・レッドソックスへ入団し、23試合で打率.356と出塁率.406を記録した。けれども、レッドソックスがワイルドカードを得たにもかかわらず、イグレシアスはポストシーズンには出場できなかった。8月末の時点でチームにいないと、ポストシーズンのロースターには入れない。

 イグレシアスがポストシーズンでプレーしたのは、デトロイト・タイガース時代の2013年だけだ。マリナーズに限らず、この夏にコンテンダーのチームへ移れば、ポストシーズンに出場するチャンスは高まる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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