Yahoo!ニュース

ア・リーグの本塁打王レースは「大型契約を断った選手」を「大型契約を得た3人」が追う展開

宇根夏樹ベースボール・ライター
バイロン・バクストン(ミネソタ・ツインズ)Jun 9, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月10日を終え、ア・リーグでは4人が15本塁打以上を記録している。アーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)が22本、ヨーダン・アルバレス(ヒューストン・アストロズ)とバイロン・バクストン(ミネソタ・ツインズ)が17本、ホゼ・ラミレス(クリーブランド・ガーディアンズ)は16本だ。ちなみに、ナ・リーグの15本塁打以上はア・リーグより2人多いものの、17本以上はいない。16本と15本が3人ずつだ。

 本塁打トップのジャッジは、今オフにFAとなる。開幕直前まで、ヤンキースと契約延長の交渉を行っていたが、合意に達することはできなかった。ブライアン・キャッシュマンGMは、7年2億1350万ドルの契約を申し出て、ジャッジに断られたとコメントしている(「ジャッジはヤンキースを去るのか。7年2億1350万ドルの申し出を却下。今シーズン終了後にFA」)。

 一方、ジャッジを追う形の3人は、2027年のシーズンが終わるまで、FAにはならない。昨オフから今シーズンにかけて、いずれも総額1億ドル以上の延長契約を交わした。アルバレスは6年1億1500万ドル(2023~28年)、バクストンは7年1億ドル(2022~28年)、ラミレスは7年1億4100万ドル(2022~28年)だ。

 なお、ホームラン1本当たりに要している平均打数――少ないほど量産ペースが速い――は、本数どおりの順位ではない。ア・リーグで二桁本塁打の21人中、上位4人の顔ぶれは本数と同じだが、9.71打数/本のバクストンが1位、9.73打数/本のジャッジが2位、11.12打数/本のアルバレスが3位、12.56打数/本のラミレスは4位となる。ナ・リーグの23人中トップは、11.31打数/本(13本塁打)のジョク・ピーダーソン(サンフランシスコ・ジャイアンツ)だ。

 バクストンの量産ペースは、ほぼ同じながらわずかにジャッジを凌いでいる。にもかかわらず、ジャッジよりも5本少ないのは、ツインズの60試合中17試合に欠場しているのが理由だ。本塁打王を獲得するには、シーズンを通して大きな故障をせずに過ごすことも、必要になる。今シーズンがメジャーリーグ8年目のバクストンは、2017年の出場140試合が最も多く、他に出場試合が三桁に達したシーズンはない。ツインズは、バクストンの故障の多さ(マイナス)よりも資質の高さ(プラス)に大枚を投じ、ここまでは――まだ契約期間の10分の1にも満たないが――成功している、と言っていいだろう。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事