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先月入団したばかりのカノーがパドレスを去る。代わりに昇格したのは、秋山翔吾ではなくこの飛ばし屋

宇根夏樹ベースボール・ライター
ノマー・マザーラ(サンディエゴ・パドレス)Mar 28, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 入団から1ヵ月経たずに、ロビンソン・カノーは、サンディエゴ・パドレスを去った。ニューヨーク・メッツの40人ロースターから外され、解雇後にパドレスと契約を交わしたのは5月13日だ。その経緯については、「4000万ドル以上の契約が残るカノーを外す以外に、メッツの選択肢はなかったのか」「メッツから解雇されたカノーを迎え入れ、パドレスはどう起用するのか」で書いた。

 メッツでは、開幕から12試合に出場し、打率.195(41打数8安打)と出塁率.233、1本塁打に終わった。パドレスでも、出場は同じく12試合。さらに打てず、打率.091(33打数3安打)と出塁率.118、長打は皆無だ。ニューヨーク・ポストのジョン・ヘイマンによると、パドレスはカノーにマイナーリーグへ降格してほしいと告げたが、カノーはそれを拒んだという。そして、FAになることを選んだ。カノーの退団に伴い、パドレスは、ノマー・マザーラをAAAから昇格させた。

 パドレスのAAAには秋山翔吾もいて(「秋山翔吾が入団するパドレスの外野手事情。秋山に昇格のチャンスはあるのか」)、14試合で打率.339(62打数21安打)と出塁率.369、3本塁打と1三塁打と2二塁打を記録している。だが、マザーラのスタッツは、秋山を凌ぐ。35試合で.打率367(128打数47安打)と出塁率.454、ホームラン7本と二塁打14本だ。秋山と同じ5月11日以降に限っても、16試合で打率.417(60打数25安打)と出塁率.485、ホームラン3本と二塁打11本を記録している。

 秋山とマザーラは、どちらも左打ちの外野手だ(カノーは左打ちの二塁手)。だが、2人のスタッツが同水準だったとしても、パドレスはマザーラを昇格させただろう。秋山はメジャーリーグでホームランを打ってないが、マザーラはパワーのある打者だ。過去2シーズンは計92試合で4本塁打に過ぎないものの、メジャーリーグ1年目の2016年から3シーズン続けて20本ずつ打ち、4年目の2019年も20本まで1本に迫った。本数は特筆するほどではないとはいえ、スタットキャストによると、そのうちの3本は推定飛距離480フィート(約146.3m)以上だ。2015年以降の「スタットキャスト・エラ」において、480フィート以上が3本は、誰よりも多い。また、2019年6月21日に打った505フィート(約153.9m)のホームランは、スタットキャスト史上最長の飛距離だ。

 ただ、マザーラの通算出塁率は.315に過ぎず、過去2シーズンはいずれも.300に届いていない。端的に言えば、マザーラはフリー・スウィンガーだ。ここから、マザーラが結果を残せず、あるいは故障などで離脱する野手が出てくれば、次に昇格するのは、秋山かもしれない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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