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「270勝以上で殿堂入りしていない投手」が1人減る。あと4人の殿堂入りは…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ニューヨーク州クーパースタウンの殿堂(写真:Shutterstock/アフロ)

 ゴールデン・デイズ・エラ・コミッティとアーリー・ベースボール・エラ・コミッティによる投票の結果が発表され、前者の候補からは、ギル・ホッジスジム・カットミニー・ミノーソトニー・オリバの4人、後者からは、バド・ファウラーバック・オニールの殿堂入りが決まった。

 彼らのうち、カットは、1959年から1983年までミネソタ・ツインズなどで投げ、283勝を挙げた。この白星は、ベースボール・リファレンスによると、歴代31位に位置する。カットより白星の少ない3人を含め、270勝以上は34人を数える。そのうち、殿堂に迎え入れられるのは、カットが30人目だ。

 これにより、270勝以上を挙げながら、殿堂入りしていない投手は、354勝のロジャー・クレメンス(9位)、297勝のボビー・マシューズ(25位)、288勝のトミー・ジョン(26位)、284勝のトニー・マレイン(29位タイ)の4人となる。

 マシューズとマレインの2人は、19世紀に投げた。どちらも、ナ・リーグ(ナショナル・リーグ)以外のメジャーリーグでプレーした期間のほうが長く、そのことが、殿堂入りしていない理由かもしれない。ちなみに、ア・リーグ(アメリカン・リーグ)は、20世紀の1901年に始まった。

 マシューズは、メジャーリーグで最初に登板した投手だ。ナショナル・アソシエーションがスタートした1871年5月4日に、フォートウェイン・ケキオンガスの開幕投手を務め、クリーブランド・フォレストシティズを完封して白星を挙げた。他の開幕戦は翌日以降に行われ、この試合はケキオンガスのホーム・ゲームだったため、マシューズは1回表のマウンドに上がった。

 マレインは、右腕だけでなく左腕でも投げた。

 あとの2人は、現代の投手だ。ジョンは、1974年9月の手術――後に「トミー・ジョン手術」として知られるようになった――を挟み、124勝(1963~74年)と164勝(1976~89年)を挙げた。記者投票の得票率は、最後の機会だった15度目の31.7%(2009年度)が最も高く、殿堂入りに必要な75%に近づくことはなかったが、誰も経験していない手術を受け、カムバックを果たし、そこから手術前よりも長いキャリアを築いたジョンは、殿堂入りに値すると思う。

 クレメンスの実績は、殿堂に迎えられるのにふさわしい。例えば、サイ・ヤング賞は史上最多の7度。それに次ぐランディ・ジョンソンより2度多い。ランディは、最初の投票で得票率97.3%を記録した。だが、クレメンスは、薬物疑惑がそれを阻み、これまで9度の投票は、得票率75%未満に終わっている。最も高かったのは、直近の61.6%だ。

 今年度から加わった候補者には、アレックス・ロドリゲスデビッド・オティースがいる。彼らが殿堂入りするのであれば、クレメンスやバリー・ボンズもそうなるべきだろう。でなければ、薬物使用者に対する判断の一貫性が損なわれる。

 記者投票の結果発表は、来年1月25日だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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