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OPS.800以上の外野手とOPS.500未満の外野手を交換。両球団それぞれの狙いは…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジャッキー・ブラッドリーJr. Sep 30, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ミルウォーキー・ブルワーズとボストン・レッドソックスは、労使協定が失効し、ロックアウトに入る直前に、トレードを成立させた。ブルワーズはレッドソックスからハンター・レンフローを獲得し、レッドソックスはブルワーズからジャッキー・ブラッドリーJr.と2人のマイナーリーガーを手に入れた。ブラッドリーJr.は、1年ぶりのレッドソックス復帰となる。2011年のドラフトで全体40位指名を受け、昨オフにFAとなるまで在籍していた。

 レンフローとブラッドリーJr.は、どちらも外野手だ。それぞれ、ライトとセンターを定位置とする。今シーズン、572打席に立ったレンフローは、ホームラン31本と二塁打33本を打ち、出塁率は.315ながら、OPS.816を記録した。ブラッドリーJr.は、428打席でホームラン6本と二塁打14本(と三塁打3本)。出塁率.236とOPS.497は、どちらも400打席以上の188人のなかで最も低かった(打率.163と長打率.261もワースト)。

 ブルワーズがレンフローを獲得した理由は、わかりやすい。ライトを守っていたアビサイル・ガルシアは、1200万ドルの相互オプションを破棄してFAになり、マイアミ・マーリンズと4年5300万ドルの契約を交わした。今シーズン、ガルシアは、ホームラン29本と二塁打18本、出塁率.330とOPS.820を記録した。

 レッドソックスの動きは、そう単純には説明できない。

 守備に関しては、ブラッドリーJr.がレンフローを凌ぐ――今シーズン、レンフローは16補殺とともに12失策も記録した――ものの、打撃はレンフローが勝る。年齢は、ブラッドリーJr.が2歳上だ。レンフローは来年1月に30歳、ブラッドリーJr.は来年4月に32歳となる。また、このトレードにより、レッドソックスが支払う金額は増えた。ブラッドリーJr.の契約は、2022年が年俸950万ドル、2023年は1200万ドルの相互オプション。解約金は800万ドルなので、来シーズンだけの在籍でも1750万ドルかかる。950万ドル+800万ドル=1750万ドルだ。一方、レンフローがFAになるのは2年後。来シーズンの年俸は、800万ドルに届かないだろう。今シーズンの年俸は、出来高を合わせても400万ドル未満だった。

 レッドソックスは、この増える支払いの分を、マイナーリーガー2人を得るための金額と考えているのではないだろうか。デビッド・ハミルトンは、24歳の遊撃手。2019年のドラフト8巡目・全体253位だ。今シーズンは、A+とAAの計101試合で、ホームラン8本と二塁打19本、打率.258と出塁率.341を記録した。三塁打11本と52盗塁からわかるとおり、スピードを最高のツールとする。アレックス・ベナレスは、来年5月に22歳となる三塁手。今年のドラフト3巡目・全体86位だ。2021年は、プロ入り前の50試合で19本塁打、プロ入り後の36試合で9本塁打を記録した。

 もちろん、ブラッドリーJr.も、ずっと守備だけの選手だったわけではない。レンフローの通算OPS.786に対し、こちらは.705――今シーズンを除いても.732――に過ぎないが、2015年は74試合で.832、2016年は156試合で.835、2020年は55試合で.814を記録している。ホームランのシーズン最多は、2016年の26本だ。

 ブラッドリーJr.がセンターに入れば、キーケー・ヘルナンデスをセンターから二塁へ移すことができる。もっとも、その場合、外野は左打者が3人となるので、レッドソックスは、ロックアウト後に右打ちの外野手を加え、ブラッドリーJr.を第4の外野手とする可能性もある。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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