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シーズン50打席で打率も出塁率も.000。それでもまったく問題はなし

宇根夏樹ベースボール・ライター
マックス・シャーザー(ロサンゼルス・ドジャース)Sep 1, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 このままいくと、ワースト記録を塗り替える。今シーズン、マックス・シャーザー(ロサンゼルス・ドジャース)は50打席に立ち、打率も出塁率も.000。当然ながら、長打率も.000だ。

 ナ・リーグとア・リーグの球史において、シーズン50打席以上で打率.000の選手は5人いる。シャーザーと同じく、いずれも投手だ。ただ、その5人目は、1964年のロン・ハーベル。その後は半世紀以上も途絶えている。また、5人とも、少なくとも2四球を記録していて、出塁率は.000ではなかった。

 シャーザーは、まったく打てない選手ではなかった。2008~19年の466打席で、打率.193(405打数78安打)と出塁率.221を記録している(ナ・リーグもDHを採用した「ユニバーサルDH」の2020年は0打席)。2009年と2015年と2018年は、それぞれ50打席以上で打率.215を上回った。二塁打は6本あり、4年前にはホームランも打っている。

 とはいえ、今シーズンのシャーザーの打撃は、もちろん、まったく問題にはなっていない。

 7月に37歳となった今シーズンも、シャーザーは好投を続けている。25登板で146.0イニングを投げ、奪三振率12.14と与四球率2.03、防御率2.40を記録している。奪三振率12.00以上は、過去4シーズンと同様。与四球率は、14シーズンのなかで3番目に低い。また、サイ・ヤング賞を受賞した3シーズン(2013年、2016年、2017年)だけでなく、規定投球回に達し、防御率2.50未満のシーズンは、これまでに一度もない。

 7月30日にワシントン・ナショナルズから移籍後に限れば、さらに際立つ。6登板で35.0イニングを投げ、奪三振率12.86と与四球率1.29、防御率1.29だ。シャーザーは4勝を挙げ、ドジャースはこの6試合とも勝利を収めた。大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)が二刀流なら、こちらは一刀流を極めている。

 ちなみに、シーズン50打席以上で出塁率.000はまだ皆無ながら、40打席以上(50打席未満)は2人いる。2008年のジェイソン・バーグマンと2016年のウェイン・チェン(現・阪神タイガース)がそうだ。それぞれ、42打席と49打席で出塁率.000を記録した。彼らは、今シーズンのシャーザーと違い、防御率も5.09と4.96と芳しくなかった。

 なお、シャーザーは8月15日に犠牲フライを打ち、1打点を挙げている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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