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トレードで売り物にならなかった選手が、ノーヒッターを阻み、サヨナラ本塁打をもぎ捕り、決勝点を挙げる

宇根夏樹ベースボール・ライター
グレゴリー・ポランコ(ピッツバーグ・パイレーツ)Aug 3, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 トレードの申し込みがあれば、ピッツバーグ・パイレーツは、グレゴリー・ポランコを手放していたに違いない。

 今シーズンも、パイレーツは低迷している。再建も捗っていない。1月にサンディエゴ・パドレスへ放出したジョー・マスグローブは、3年前にゲリット・コール(現ニューヨーク・ヤンキース)と交換にヒューストン・アストロズから手に入れた選手の一人だ。

 パイレーツがポランコと交わしている5年3500万ドルの契約は、2022年と2023年の球団オプションがついているものの、5年目を迎えている。

 だが、トレード・デッドラインを過ぎても、ポランコはパイレーツにいる。そして、8月3日の試合で大活躍した。

 7回表に、ポランコは代わったばかりのダニエル・ノリス(ミルウォーキー・ブルワーズ)からヒットを打ち、ノーヒッターを阻んだ。ノリスの前に投げたエイドリアン・ハウザーは被安打ゼロ。ブルワーズは、継投ノーヒッターの達成まで、あと8アウトとしていた。

 9回裏には、大飛球をキャッチした。ポランコがいなければ、この打球はライトのフェンスを越え、サヨナラ本塁打となっていただろう。

 10回表は、再びヒットを打ち、三塁から走者を生還させた。その後、パイレーツは2点を追加し、10回裏は得点を許さず。8対5で勝利を収めた。

 2本目のヒットは当たり損ねの内野安打ながら、1本目は二塁手の横を鋭く抜けていった。また、最初の2打席は四球を選び、どちらも直後に二盗を成功させた。内野安打も、足で稼いだヒットという見方もできる。

 同じ試合ですべてを発揮することは稀にしても、走攻守のいずれも、決してまぐれではない。現在の長期契約からも、そのことは窺える。

 ただ、これまでのポランコは、その資質に見合った成績を残していない。過去7シーズンのうち、20本塁打以上は2度、二塁打30本以上は3度あり、2015年には27盗塁を記録しているものの、OPSが.800を超えたのは、2018年しかない。しかも、5シーズンのOPSは.730にも届かなかった。今シーズンのOPSも.671。ホームランは11本、二塁打は8本、盗塁は13だ。

 パイレーツは、来シーズンの球団オプションを破棄するだろう。今シーズンより150万ドル高い、年俸1250万ドルでポランコを保有する代わりに、解約金の300万ドルを支払うはずだ。その場合、ポランコはFAになる。来月で30歳の年齢からすると、パイレーツを含め、契約を申し出る球団はありそうだが、年俸は500万ドル未満でも不思議ではない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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