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OPS.813の二塁手を擁するパドレスがOPS.836の二塁手を獲得した理由。どちらも左打者

宇根夏樹ベースボール・ライター
アダム・フレイジャー May 25, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 サンディエゴ・パドレスが、ピッツバーグ・パイレーツからアダム・フレイジャーを獲得したようだ。ESPNのジェフ・パッサンやカイリー・マクダニエルをはじめ、いくつものメディアが報じている。3人の若手と交換に、パドレスはフレイジャーと140万ドルを得たという。フレイジャーの年俸は430万ドル。ここから支払う残り分の大半を、パイレーツが負担する格好だ。

 2019年から、フレイジャーはパイレーツの正二塁手としてプレーしてきた。一方、パドレスの二塁には、ジェイク・クローネンワースがいる。2人のシーズンOPSは.836と.813。それほど大きな違いはない。出塁率は.388と.349なのでフレイジャーが勝るものの、四球率は8.2%と8.3%だ。ホームランは4本と13本。クローネンワースのほうが多い。しかも、どちらも左打者だ。

 これでは、グレードアップするとは言い難い。にもかかわらず、パドレスがフレイジャーを手に入れた理由は、フレキシビリティにあるのではないだろうか。

 二塁の他に、フレイジャーは外野の両コーナー、クローネンワースは内野の他3ポジションも守れる。複数のポジションをこなすレギュラークラスの選手が、1人ではなく2人になることで、ラインナップのバリエーションはかなり増える。今シーズンに限った話ではない。パドレスは、来シーズンもフレイジャーを保有できる。クローネンワースがFAになるのは、2025年のオフだ。

 最近のロサンゼルス・ドジャースが、いい例だ。クリス・テイラーは遊撃以外の内外野、マックス・マンシーは遊撃以外の内野を守る。彼らに加え、昨シーズンまでのドジャースには、バッテリー以外をこなすキーケー・ヘルナンデス(現ボストン・レッドソックス)がいたし、今シーズンは外野に専念しているコディ・ベリンジャーは、一塁手としても出場していた。

 なお、遊撃手のフェルナンド・タティースJr.は、すでにフレイジャーと併殺デュオを組んでいる。今年のオールスター・ゲームに、ナ・リーグの「1番・遊撃」と「9番・二塁」として先発出場し、2回表に6-4-3の併殺を記録した(一塁手はアトランタ・ブレーブスのフレディ・フリーマン)。

 クローネンワースと三塁手のマニー・マチャドも、今年のオールスター・ゲームに出場した。左から反時計回りに、マチャド、タティースJr.、フレイジャー、クローネンワースの内野カルテットも、これから実現しそうだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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