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もしかすると史上初!? チャップマンがチャップマンを討ち取り、試合を締めくくる

宇根夏樹ベースボール・ライター
アロルディス・チャップマン(ニューヨーク・ヤンキース)Jun 19, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月19日、アロルディス・チャップマン(ニューヨーク・ヤンキース)は、9回表のマウンドに上がり、シーズン15セーブ目を挙げた。

 完璧なピッチングではなかった。三振、四球、外野フライであと1アウトとなったところから、ヒットを2本続けて打たれ、1点を取られた。リードは3点から2点に縮まり、一塁と二塁には走者。ホームランが出れば、逆転となる。だが、チャップマンは次の打者を3球三振に仕留め、試合を終わらせた。スタットキャストによれば、最後の球は今シーズンの全投手最速となる103.4マイル。ジョーダン・ヒックス(セントルイス・カーディナルス)が4月7日に記録した、103.2マイルを上回った。

 これにより、ヤンキースのクローザーは「チャップマンvs.チャップマン」を制した。103.4マイルの球を空振りし、三振を喫したのは、マット・チャップマン(オークランド・アスレティックス)だ。

 同じラストネームの投手と打者が対戦し、そこで試合が終わったことは、過去にもある。例えば、2019年9月6日と2021年6月6日には、ウィル・スミスウィル・スミスを討ち取り、試合を締めくくっている。こちらは、ファーストネームも同じ、ウィリアムとウィリアムだ。2年前、投手のスミスはサンフランシスコ・ジャイアンツにいた。現在はアトランタ・ブレーブスで投げている。打者のスミスは2年前にロサンゼルス・ドジャースからデビューし、今も在籍している。

 2人のチャップマンのうち、アロルディスはキューバ出身の33歳、マットはカリフォルニア州出身の28歳だ。レギュラーシーズンの対戦は2度目。3年前の5月12日に、マットがアロルディスから四球を選んだ。この時は、同点の9回表、無死一塁。打席の結果が何であれ、試合終了にはならなかった。

 ただ、同じ年のポストシーズンで、彼らは顔を合わせている。ワイルドカード・ゲームの9回表、2死二塁。アロルディスがマットに一塁ゴロを打たせた。それを含めると、「チャップマンvs.チャップマン」で試合終了は、2度目となる。なお、球史において、チャップマンというラストネームのメジャーリーガーは他にもいるが、そのうちの2人が対戦し、そこで試合終了は、アウトだけでなくサヨナラ安打を含め、アロルディスとマットしか見当たらなかった。調べたのは、ナ・リーグとア・リーグだ。

 この翌日も、アロルディスは9回表に登板し、先頭打者と次の打者を続けて歩かせたものの、5-4-3のトリプル・プレーにより、セーブを記録した。最後の打者は、ショーン・マーフィー(アスレティックス)だ。その前にも「チャップマンvs.チャップマン」はなし。マットの打席はこのイニングの先頭打者から数えて7人目だったので、対戦する可能性は低かった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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