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チャップマンが本塁打を2本打たれ、1アウトも記録できずにサヨナラ負け。過去にこんなことあった!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
アロルディス・チャップマン(ニューヨーク・ヤンキース)Jun 10, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月10日、アロルディス・チャップマン(ニューヨーク・ヤンキース)は、9回裏のマウンドに上がった。この時点のスコアは5対3。ヤンキースがミネソタ・ツインズを2点リードしていた。

 けれども、チャップマンは試合を締めくくれなかった。それどころか、1アウトも記録できなかった。まず、先頭打者のホルヘ・ポランコにシングル・ヒット、2人目のジョシュ・ドーナルソンにホームランを打たれ、同点に追いつかれた。さらに、まるで繰り返しのように、3人目のウィリアンズ・アスタディーヨと4人目のネルソン・クルーズにも、シングル・ヒットとホームランを打たれ、サヨナラ負けを喫した。

 それまで、チャップマンは23試合に登板して1イニングずつを投げ、シーズン防御率0.39を記録していた。失点は2、自責点は1。被安打は7本、被本塁打は1本しかなかった。かつてと違い、誰よりも速い球を投げるわけではないが、開幕前に「チャップマンは「最速」から「最強」へ進化するのか」で書いたとおり、今シーズンはスプリッターを全投球の約10%まで増やし、打者を封じてきた。

 もちろん、チャップマンといえども、いつも必ず抑えられるわけではない。ただ、1登板に被安打4本、被本塁打2本、4失点、0アウトは、どれもそれぞれ、自己ワーストに並ぶ。この4つのうち2つ以上が同時に起きたのは、これまで、2014年8月17日の4失点と0アウトしかなかった。この試合は、4点リードの9回裏に登板し、先頭打者から4人続けて歩かせたところで降板。次の投手が犠牲フライ(と犠飛にならないライト・ライナー)と満塁本塁打を打たれた。

筆者作成(ベースボール・リファレンスのデータより)
筆者作成(ベースボール・リファレンスのデータより)

 7年前のこの試合のように、4つが揃う前にマウンドを降りることもある。また、同点で迎えた9回裏に登板し、先頭打者にホームランを打たれれば、4つのうち当てはまるのは0イニングだけ。被安打、被本塁打、失点は1ずつだ。

 とはいえ、今回が極めて珍しいことに変わりはない。1登板に被安打4本は8年ぶり3度目、被本塁打2本は5年ぶり3度目、4失点は7年ぶり4度目だ。

 救いがあるのは、悪いことが一度に重なったことだろうか。被安打4本、被本塁打2本、4失点が別々の試合で起き、3度のサヨナラ負けを喫するのに比べれば、1登板にどれだけ打ち込まれようとも、サヨナラ負けは1度に過ぎない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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