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投手の「打者3人ルール」に、名将はこう対応した!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジョー・マッドン(左)とトニー・ラルーサ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 4月2日の8回裏、2死二塁。アルバート・プーホルス(ロサンゼルス・エンジェルス)を打席に迎え、シカゴ・ホワイトソックスのトニー・ラルーサ監督は、敬遠四球で歩かせることを指示した。この時点で、ホワイトソックスのリードは1点。二塁にいるマイク・トラウトだけでなく、プーホルスも生還すると、ホワイトソックスは逆転される。

 プーホルスの次の打者は、ホゼ・イグレシアスだ。ラルーサ監督は、プーホルスとイグレシアス、あるいはプーホルスと代打要員を比べ、後者の方がアウトにしやすいと判断したのかもしれない。プーホルスは41歳。往年のような打者ではなくなっているが、この試合の4回裏には663本目のホームランを打った。

 ただ、敬遠四球には、別の要素も絡んでいたのではないだろうか。

 この回の先頭打者、3番のトラウトを歩かせたところで、ホワイトソックスの投手は、マイケル・コペックからエバン・マーシャルに交代した。マーシャルは2人続けて討ち取った後、6番のプーホルスを歩かせ、クローザーのリーアム・ヘンドリクスと代わった。

 登板した投手は、少なくとも3人の打者と対戦するか、イニングを終わらせるか、故障に見舞われない限り、交代できない。そのため、プーホルスの打席でマーシャルを降ろし、ヘンドリクス(あるいは他の投手)を投げさせることはできなかった。

 ということで、「ヘンドリクス対プーホルス」の選択肢は存在せず、「マーシャル対プーホルス」「プーホルスを歩かせた後のマーシャル対イグレシアス」「プーホルスを歩かせた後のヘンドリクス対イグレシアス」のなかから、ラルーサ監督は最後の一つを選んだ。

「打者3人ルール」は昨シーズンからスタートしたが、ラルーサが監督として直面するのは、今シーズンが初めてだ。ラルーサの監督歴は30年以上に及び、オークランド・アスレティックスとセントルイス・カーディナルスでワールドシリーズを制している――采配を振った両リーグのチームでワールドシリーズ優勝は、他にはスパーキー・アンダーソンしかいない――ものの、2011年のワールドシリーズ優勝を最後に、ユニフォームを着ていなかった。

 ヘンドリクスは、イグレシアスをセンター・フライに討ち取り、8回裏を終わらせた。

 けれども、9回表にホワイトソックスが5点を挙げてリードが広がったせいなのか、イニングをまたいだせいなのか、それとも他の原因があったのか、9回裏は大谷翔平にホームランを打たれた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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