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エンジェルスは遊撃をグレードアップせず!? 名手の後任に獲得したのは…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ホゼ・イグレシアス Jul 21, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 12月2日、ロサンゼルス・エンジェルスは、どちらも右投手のマイナーリーガー2人と交換に、ボルティモア・オリオールズから遊撃手のホゼ・イグレシアスを獲得した。エンジェルスで2016年から遊撃を守ってきたアンドレルトン・シモンズは、FAになった。イグレシアスは、その後任というわけだ。

 2人の年齢はほぼ同じ。来シーズンの開幕時はともに31歳だ。シモンズほどの名手ではないが、イグレシアスも守備はうまい。打撃は同水準と言っていいだろう。今シーズン、イグレシアスが打率.373とOPS.956を記録したのに対し、シモンズは打率.297とOPS.702だったが、それぞれの出場は39試合と30試合に過ぎない。ここ5シーズンの打率/OPSは、イグレシアスが.274/.701、シモンズは.281/.722。ここ3シーズンは.291/.745と.282/.718だ。どちらも基本的にはコンタクト・ヒッターで、パワーはそれほどなく、選球眼もあまりよくない。

 シモンズと同じく、FAの遊撃手には、マーカス・シミエンディーディー・グレゴリアスがいる。どちらも、打者としてはシモンズとイグレシアスに勝る。また、エンジェルスは再建中のチームではない。来シーズンの目標は、2014年を最後に遠ざかるポストシーズン進出だ。今オフはビリー・エプラーGMが解任され、その後任として、アトランタ・ブレーブスのアシスタントGMだったペリー・ミナシアンが招かれた。

 にもかかわらず、遊撃手をグレードアップしなかったのは、他にもっと補強を要するポイントがあるからだ。来シーズン、イグレシアスの年俸は350万ドル。今シーズンのシモンズは年俸1500万ドル――実際の金額はシーズン短縮に伴って減少――だったので、その4分の1にも満たない。今オフ、エンジェルスが大枚を投じるのは、先発投手に対してだろう。

 それともう一つ、イグレシアスは来シーズンが終わるとFAになる。来オフのFA市場には、有力な遊撃手が数多く出る。フランシスコ・リンドーア(クリーブランド・インディアンズ)、コリー・シーガー(ロサンゼルス・ドジャース)、カルロス・コレイア(ヒューストン・アストロズ)、ハビア・バイエズ(シカゴ・カブス)、トレバー・ストーリー(コロラド・ロッキーズ)がそうだ。なかには延長契約を交わす選手もいるかもしれないが、それでも、今オフのFA市場より賑わうことは間違いなさそうだ。エンジェルスにとって、イグレシアスは1シーズン限りの「つなぎ」なのかもしれない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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