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サヨナラ勝ちを呼んだ「守備・代走要員」の交換相手は、福岡ソフトバンクのムーアと引き換えに得た遊撃手

宇根夏樹ベースボール・ライター
ブレット・フィリップス/右はコリー・シーガー Oct 24, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ワールドシリーズの第4戦は、ヒットにエラーが絡み、タンパベイ・レイズがサヨナラ勝ちを収めた。そのヒットを打ったのは、守備・代走要員のブレット・フィリップスだ。

 8回裏、フィリップスは代走として起用され、9回表はライトを守った。そして、1点ビハインドの9回裏、2死一、二塁の場面で、打順が回ってきた。前日までのポストシーズン出場5試合において、打席に立ったのは2度だけ。ディビジョン・シリーズの第2戦と第3戦に、いずれも途中からライトを守り、それぞれ二塁ゴロと三振に倒れた。10月7日を最後に、半月以上も打席に立っていなかった。

 ただ、この試合に出場していない野手は、捕手のマイケル・ペレスしかいなかった。フィリップスかペレスの二者択一だ。ケビン・キャッシュ監督は、延長戦の守備も考慮したのかもしれない。9回裏が始まった時、捕手のマイク・ズニーノに代えて筒香嘉智を起用したので(結果は三振)、フィリップスの代打にペレスを使うと、同点に追いついた場合は筒香が守備につくことになる。

 フィリップスは、ずっとポストシーズンのロースターにいたわけではない。5試合制のディビジョン・シリーズから7試合制のリーグ・チャンピオンシップ・シリーズへ進むに当たり、キャッシュ監督は、投手13人と野手15人だったロースターの構成を変更し、それぞれ14人とした。そこで、フィリップスはロースターから外された。ワールドシリーズも7試合制だが、試合は連日ではなく、第2戦と第3戦の間と第5戦と第6戦の間にオフが1日ずつある。キャッシュ監督は投手を1人減らして野手を1人増やし、フィリップスをロースターに戻した。

 また、2ヵ月前まで、フィリップスはレイズにいなかった。8月27日のトレードにより、カンザスシティ・ロイヤルズから移籍した。この時にレイズが発したツイートの画像からも、フィリップスが期待されている役割は窺える。なお、「おかえり、ブレット・フィリップス!」と綴っているのは、レイズに在籍したことがあるからではない。フィリップスは、タンパとセント・ピーターズバーグに近い街で生まれ育った。

 トレードでフィリップスと交換されたのは、マイナーリーガーの遊撃手、ルーシャス・フォックスだ。4年前の夏、フォックスは他2選手とともに、サンフランシスコ・ジャイアンツからレイズへ移った。その際にレイズが放出したのが、現在は福岡ソフトバンクホークスにいるマット・ムーアだった。

 フィリップスとムーアの入れ替わりは間接的だが、先発投手と交換に、レイズが得た選手は少なくない。遊撃手のウィリー・アダメスは、6年前の夏にデビッド・プライスの交換要員として、三角トレードでデトロイト・タイガースからレイズへやってきた。ちなみに、現在のプライスはロサンゼルス・ドジャースに在籍しているが、ロースターには入っていない。開幕前に、今シーズンはプレーしないことを決めた。

 2017年1月にドルー・スマイリー(現ジャイアンツ)をシアトル・マリナーズへ放出し、その時に得た3人のなかには、第4戦の先発マウンドに上がったライアン・ヤーブローがいる。一昨年の夏にクリス・アーチャーの見返りとしてピッツバーグ・パイレーツから手に入れた3人のうち2人は、タイラー・グラスナウオースティン・メドウズだ。第1戦に続き、グラスナウは第5戦の先発登板が予定されている。メドウズは3シリーズ続けて不振ながら、ディビジョン・シリーズでは2本のホームランを打った。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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