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先発投手がトレードで加わり、山口俊のローテーション入りは消滅!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
タイワン・ウォーカー Jul 25, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 8月27日、トロント・ブルージェイズは、シアトル・マリナーズからタイワン・ウォーカーを獲得した。後日決定選手(あるいは金銭)との交換だ。現時点では、プレーヤー・プールの60人に入っている選手しかトレードできないので、そこにはいないマイナーリーガーが、オフにウォーカーの交換要員として移籍すると思われる。

 ここまで、ウォーカーは5先発で防御率4.00。ここ2登板は、いずれもクオリティ・スタートを記録している。シーズンが終わるとFAになるため、ブルージェイズにとっては「レンタル」だ。保有できる期間が短い分、小さな見返りで入手できる。MLBネットワークのジョン・モロシは、トレードの数日前に、ニューヨーク・ヤンキースが獲得に興味を示していると報じていた。

 ブルージェイズでは、8月中旬から下旬にかけて、ネイト・ピアソンマット・シューメイカートレント・ソーントンの先発投手3人が故障者リストに入った。ソーントンは残りシーズンの欠場が決まり、ピアソンも復帰の目処は立っていない。ヒョンジン・リュタナー・ロアークチェイス・アンダーソンの3人にウォーカーが加わっても、先発投手はまだ足りない。少なくとも、あと1人は必要だ。

 ブルージェイズは、さらなるトレードを仕掛け、先発投手を手に入れようとするかもしれない。こちらもウォーカーのトレードが決まる前だが、モロシは別の記事で、ブルージェイズはピッツバーグ・パイレーツのトレバー・ウィリアムズチャド・カールクールの獲得を検討中と報じた。

 もっとも、ウィリアムズやカールクールに限らず、ブルージェイズが獲得に動いても、トレードが成立するとは限らない。他球団にさらわれるかもしれず、交換条件が折り合わないこともある。そうなった場合は、ブルペンにいる投手が先発マウンドに――オープナーとしてではなく――上がるはずだ。アンソニー・ケイトーマス・ハッチライアン・ブロッキジュリアン・メリーウェザーらとともに、山口俊もその候補の一人だろう。

 山口は最初の2登板で躓いたものの、8月に入ってからは6登板で計11.2イニングを投げ、2点しか取られていない。直近の8月26日は3回表から登板し、4イニングを1失点に抑え、初白星を手にした。

 ただ、ブルージェイズが15勝14敗と勝ち越し、地区首位のタンパベイ・レイズまで4.5ゲーム差の3位につけているのは、アンソニー・バス(バース)やラファエル・ドリスをはじめとする、ブルペンの働きが大きい。山口が日本プロ野球でリリーフとしても実績を残しているのに対し、上に挙げた他の候補たちは、いずれも昨シーズンまで、基本的に先発投手として(主にマイナーリーグで)投げてきた。この点からすると、監督とコーチが、山口をこのままブルペンに置いておく方が勝利につながる、と判断してもおかしくない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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