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「無観客」のスタンドから退場になったのは…

宇根夏樹ベースボール・ライター
スティーブン・ストラスバーグ(ワシントン・ナショナルズ)Aug 9, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 8月13日、3回裏にオースティン・ボース(ワシントン・ナショナルズ)が投げた球は、右打者の外角低目に決まったように見えた。けれども、球審のカルロス・トーレスは手を上げなかった。ストライク・ゾーンよりも低いと判定したようだ。

 これに対し、三塁側のダグアウトからデーブ・マルティネス監督が声を上げ、トーレスも何か言い返した。その直後、トーレスはダグアウトよりも上を指差し、退場を宣告した。マルティネス監督ではなく、スタンドのセクション121にいたボースのチームメイト、スティーブン・ストラスバーグに対してだ。

 ストラスバーグは、かぶっていたキャップを左手で持ち上げて挨拶し、階段を上ってスタンドから姿を消した。MLB.comのジェシカ・カメラートによると、マルティネス監督は試合後に「彼が何て発言したかは言えないけれど、彼のことは好きさ」と語ったという。

 今シーズンの試合は、無観客で行われている。登板日以外にスタンドから「観戦」する先発投手は、ストラスバーグだけではない。例えば、ザック・グレインキー(ヒューストン・アストロズ)もその一人だ。彼らは、ソーシャル・ディスタンスを意識しているのだろう。

 スタンドから退場となった投手も、ストラスバーグが最初ではない。7月26日に、スタンドにいたデレク・ホランド(ピッツバーグ・パイレーツ)が、同じように退場を宣告されている。

 いつになれば、観客を入れて試合を行うことができるのかは、まだわからない。観客の入場を計画しているシンシナティ・レッズも、時期は未定だ(それについては「メジャーリーグの試合にも観客が戻ってくる!? その時、最初に声援を受ける打者は…」で書いた)。スタンドからの退場者は、ストラスバーグが最後ではないかもしれない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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