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この夏、あのチームは大エースを放出するのか。4度目のサイ・ヤング賞もあり得るが、チームは低迷中

宇根夏樹ベースボール・ライター
マックス・シャーザー(ワシントン・ナショナルズ)Jun 14, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 借金5を抱えるワシントン・ナショナルズは、地区首位と8.5ゲーム差の4位に沈み、ワイルドカードの2番手にも6ゲーム差をつけられている。そのなかで、エースのマックス・シャーザーは、今シーズンも好投している。99.1イニング、防御率2.81、奪三振率12.32はいずれもリーグ・トップ5に入っていて、与四球率1.81は7位だ。このままいけば、2年ぶり4度目のサイ・ヤング賞もあり得る。

 ナショナルズのマイク・リゾーGMは、この夏にシャーザーを放出するつもりはないと発言しているようだ。ジ・アスレティックのケン・ローゼンタールが報じている。確かに、ナショナルズは再建中ではない。昨オフ、ブライス・ハーパー(現フィラデルフィア・フィリーズ)は退団したものの、6年1億4000万ドル(2019~24年)でパトリック・コービンを迎え入れた。シャーザーと交わしている7年2億1000万ドルの契約は2021年まで、スティーブン・ストラスバーグの7年1億7500万ドルは2023年まで続くので、あと2シーズンはこの3人をローテーションに並べることができる。

 ただ、この夏にシャーザーを放出する可能性はゼロではない。今シーズンが終わると、シャーザーは「10&5(テン・アンド・ファイブ)」の権利を持つ。これを行使すればトレードを拒否できるので、ナショナルズは自由に放出することができなくなる。また、シャーザーは7月に35歳を迎える。まだ兆候はないとはいえ、いつ衰えてもおかしくない年齢だ。保有できる期間(契約の残り)が少なくなることも併せると、トレードにおけるシャーザーの「商品価値」は、これから下がっていく。

 もしかすると、先発投手を必要としているニューヨーク・ヤンキースが、シャーザーの獲得に動くかもしれない。ローテーションに防御率3.50未満の投手は皆無。MLBネットワークのジョン・ヘイマンによると、アトランタ・ブレーブスに入団したダラス・カイクルに、ヤンキースは契約を申し出ていたという。数名となるシャーザーの交換要員に、数年後の台頭が期待されるプロスペクトだけでなく、すぐにレギュラーとして起用できる若手も含めれば、来シーズンの浮上を図るナショナルズの需要に合うのではないだろうか。

 ヤンキースは、クリント・フレイジャーをAAAに降格させる。これは、シアトル・マリナーズから獲得したエドウィン・エンカーナシオンをロースターに入れるためだが、それがなくても、ジャンカルロ・スタントンアーロン・ジャッジが戻ってくれば、外野にはアーロン・ヒックスブレット・ガードナーもいるので、フレイジャーは余剰人員となる。来シーズンも、状況はあまり変わらない。フレイジャーを含む外野手5人のうち、今オフにFAとなるのはガードナーだけだ。守備はともかく、今シーズン、フレイジャーはOPS.843を記録している。年齢も24歳と若い。

 それに対し、ナショナルズで外野を守っている、ホアン・ソトビクター・ロブレスアダム・イートンのうち、イートンは5年2350万ドルの5年目だ。この契約には球団オプションが2年分ついているが、引き取り手さえあれば、代わりの外野手が加入しなくても、ナショナルズはこの夏にイートンを放出するだろう。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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