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ナックルボーラー2人の投げ合いは実現するのか。今シーズン初登場の魔球使いは、さらに稀少な左投手

宇根夏樹ベースボール・ライター
ライアン・フィアベンド(トロント・ブルージェイズ)May 18, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今シーズンのメジャーリーグに、ナックルボーラーが初登場した。5月18日、ライアン・フィアベンド(トロント・ブルージェイズ)が先発マウンドに上がり、4回4失点で黒星を喫したものの、雨天コールドによって「完投」を記録した。

 昨シーズン、メジャーリーグで投げたナックルボーラーは、スティーブン・ライト(ボストン・レッドソックス)しかいなかった。今年3月、ライトは禁止薬物の陽性反応により、80試合の出場停止を科された。2012年にサイ・ヤング賞を受賞したR.A.ディッキーは、正式な引退こそ表明していないが、2017年11月にFAとなってからは、どの球団とも契約していない。

 ナックルボーラーのなかでも、フィアベンドはさらに稀少な左投手だ。おそらく、21世紀に入ってからは1人目だと思われる。フィアベンドも、かつてメジャーリーグで投げていた時は、ナックルボーラーではなかった。

 2006~08年にシアトル・マリナーズで25試合に投げた後、フィアベンドはトミー・ジョン手術を受け、マイナーリーグと独立リーグを経て、2014年にテキサス・レンジャーズで6試合に登板した。2015~18年は韓国で投げ、その3年目からレパートリーにナックルボールを追加。今年2月にブルージェイズとマイナーリーグ契約を交わした。5月18日の74球は、スタットキャストによると、平均74.6マイルのナックルボールが44球(59.5%)、平均85.7マイルの4シームが21球(28.4%)、平均76.1マイルのチェンジアップが9球(12.2%)だった。

 今のところ、フィアベンドとライトが同じ試合に先発登板し、ナックルボーラーの投げ合いが実現する可能性は低い。フィアベンドは降格していないものの、次の登板は決まっていない。ライトの処分は6月下旬に終わるが、先発投手として起用されるかどうかはわからない。出場停止となるまでは、ブルペンの一員として考えられていた。

 ただ、ナックルボールだけに、思いもよらぬことが起きても不思議ではない。そもそも、フィアベンドがメジャーリーグに戻ってくるとは――それもナックルボーラーとして――誰も予想していなかったはずだ。2014年の6登板はすべてリリーフなので、メジャーリーグの先発マウンドに立つのは、2008年9月23日以来のことだった。スタッツ社によれば、先発登板から先発登板まで10年と236日のブランクは、史上9番目の長さだという。

 3年前、レッドソックスの開幕戦が順延になり、ライトとディッキーの投げ合いが実現しそうになった時、CBSスポーツのマイク・アシーサは「私の知る限り、レギュラーシーズンに2人のナックルボーラーが最後に投げ合ったのは1988年、トム・キャンディオッティとチャーリー・ハフがそうだ」と書いた(結局、ディッキーが4月9日、ライトは4月10日に登板した)。ディッキーとライトは2014年9月7日に同じ試合で投げているが、この時のライトはリリーフだった。また、ディッキーは2003年7月29日に先発登板した際、ナックルボーラーのティム・ウェイクフィールドと投げ合ったが、当時のディッキーはナックルボーラーではなかった。

 フィアベンドとライトは、2人ともア・リーグ東地区のチームに在籍している。7月以降、ブルージェイズとレッドソックスは10試合で対戦する。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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