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スプラッシュ!!「海へ飛び込むホームラン」と「川へ飛び込むホームラン」はどっちが出やすい!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジョシュ・ベル(ピッツバーグ・パイレーツ)Apr 14, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 5月8日、ジョシュ・ベル(ピッツバーグ・パイレーツ)が放った打球は、ライトのフェンスどころかスタンドも越え、球場の外を流れるアレゲニー川に着水した。

 サンフランシスコ・ジャイアンツは、オラクル・パークの外にあるマッコビー湾に飛び込んだホームランを「スプラッシュ・ヒット」としてカウントしている。この呼称を用いるのは、ジャイアンツの選手によるホームランのみだが、ホームページには相手チームの選手が打ったホームランも掲載してある。2000年にパシフィックベル・パークとして開場してから、「スプラッシュ・ヒット」は80本近く出ていて、相手チームのホームランを含めると、120本を超える。

 一方、パイレーツは2001年からPNCパークを本拠地としているが、途中でバウンドすることなくアレゲニー川に飛び込んだのは、ベルのホームランが4本目だ。最初の1本は、2002年7月6日にヒューストン・アストロズのダリル・ウォードが打ったので、パイレーツでは3本目となる。2本目と3本目はそれぞれ、ギャレット・ジョーンズ(2013年6月2日)――2016年に読売ジャイアンツで24本塁打の「ギャレット」――とペドロ・アルバレス(2015年5月19日)が記録した。ベルのホームランは、スタットキャストによると、初速114.9マイルで角度は25度、推定飛距離は472フィートだった。

 また、2003年に開場したシンシナティ・レッズの本拠地、グレートアメリカン・ボールパークからオハイオ川に着水したホームランはなく、今後もまず出ないと思われる。球場とオハイオ川の間には、ハイウェイが走っている。

 海へ飛び込むホームランが、川へ飛び込むホームランよりも多いのは、バリー・ボンズがホームとしていたからではない。ボンズの「スプラッシュ・ヒット」は歴代最多の35本を数え、PNCパークではホームラン7本、グレートアメリカン・ボールパークでも3本を打っているものの、その10本はいずれもスタンドへ飛び込んだ。ジャイアンツへ移る前に、ボンズはパイレーツでプレーしていたが、当時の本拠地だったスリーリバース・スタジアムでも、川には打ち込んでいない。まだステロイドを使っていなかった(と思われる)ことが理由ではなく、スリーリバース・スタジアムから川までの距離は、PNCパークほど近くなかった。

 なお、アレゲニー川に打ち込んだ4人のなかには、マッコビー湾に飛び込むホームランも打った選手がいる。それは、ギャレットだ。「スプラッシュ・ヒット」とは呼ばれなくても、実質的には同じホームランを記録したのは、2013年8月22日。アレゲニー川に着水させた翌々月のことだった。ただ、このシーズン、ギャレットはホームランを15本しか打っていない。8シーズンのうち、2012年の27本が最も多く、通算122本でメジャーリーガーとしてのキャリアを終えた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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