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蜜月は早くも終わり!? 3億3000万ドルで入団したスーパースターに地元ファンがブーイング

宇根夏樹ベースボール・ライター
ブライス・ハーパー(フィラデルフィア・フィリーズ)Mar 30, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 フィラデルフィアの観客が、ブライス・ハーパー(フィラデルフィア・フィリーズ)にブーイングを浴びせた。4月30日、フィリーズの本拠地、シチズンズバンク・パークで行われた試合の8回裏。ハーパーが2打席続けて空振り三振を喫し、ダグアウトへ戻ってきた時のことだ。この日、ハーパーは4打数0安打に終わり、ライトの守備でもまずいプレーをした。3回表に浅いフライを目の前に落ちる二塁打とし、8回表はグラブに当てて落球した。

 この球場でハーパーがブーイングを浴びるのは、初めてのことではない。けれども、昨シーズンまでは、ワシントン・ナショナルズのユニフォームを着ていた。

 ナショナルズからFAになったハーパーは、フィリーズと13年3億3000万ドルの契約を交わした。約3週間後にマイク・トラウト(ロサンゼルス・エンジェルス)が12年4億2650万ドルで契約を延長するまで、ハーパーの契約総額は史上最高だった。

 新天地へ移ったハーパーは、順調なスタートを切った。ホームで迎えた開幕戦こそ3打数0安打(1敬遠四球)ながら、2試合目と3試合目にホームランを打つと(写真は1本目の直後)、4試合目はかつてホームとしていたナショナルズ・パークへ戻り、2三振後、二塁打とタイムリー・ヒット、ホームランを打ち、激しいブーイングに「返答」した。

 だが、現在のハーパーはスランプに陥っている。4月19日までの打率.296(71打数21安打)、4本塁打、6二塁打、25三振に対し、4月20~30日は打率.121(33打数4安打)、2本塁打、2二塁打、13三振。5月1日も4打数0安打に終わった。4月30日の試合後、クラブハウスで記者たちに囲まれたハーパーは、ブーイングについて「自分も同じことをするだろう」とコメントした。

 超がつく大型契約で入団したスーパースターとはいえ、開幕から1ヵ月しか経っておらず、まだそれほど長いスランプ――このまま続けば別だが――でもない。手厳しすぎると感じるかもしれないが、これがフィラデルフィアのファンだ。

 フィリーズ一筋にプレーしたマイク・シュミットは、本塁打王を8度獲得し、三塁の守備ではゴールドグラブを10度受賞した。リーグMVPは3度。フィリーズが初めてワールドチャンピオンとなった1980年は、レギュラーシーズンに加え、ワールドシリーズでもMVPに選ばれた。殿堂には、1995年に最初の選考投票で迎えられている。間違いなく、フィリーズ史上最高のフランチャイズ・プレーヤーだ。ただ、シュミットでさえ、地元ファンのブーイングを免れることはなかった。

 ハーパーがホーム・ゲームでブーイングを浴びるのは、これが最後ではないだろう。そして、喝采も。ハーパーの契約は、2031年まで続く。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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