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サイ・ヤング賞投手の望みが叶えば、キンブレルは先発登板もある!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ブレイク・スネル(タンパベイ・レイズ)Sep 29, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 タンパベイ・レイズのエースは、球団が大物クローザーと契約することを望んでいる。タンパベイ・タイムズのマーク・トプキンによると、ブレイク・スネルは3月2日に「キンブレルが欲しい。彼はベテランだ。実績がある。最高だ。誰でも、最高のクローザーを自分のチームに欲しいだろ?」と語ったという。昨シーズン、1点台の防御率を記録したスネルは、ジャスティン・バーランダー(ヒューストン・アストロズ)を僅差で凌ぎ、サイ・ヤング賞に選ばれた。

 確かに、クレイグ・キンブレルには実績がある。メジャーリーグ2年目から8シーズン続けて30セーブ以上(平均41.5セーブ)を挙げ、通算333セーブはすでに歴代14位に位置する。このペースなら、あと1シーズンでトップ10入り。通算のセーブ成功率も90%以上だ。過去3シーズン、キンブレルはレイズと同じア・リーグ東地区のボストン・レッドソックスにいた。対戦相手として、スネルは何度もキンブレルの投球を目にしてきた。

 また、キンブレル30歳だ。ベテランであっても、衰える年齢ではない。スタットキャストが記録した昨シーズンの空振り率は、4シームもカーブも、それぞれ30%台と50%台の高水準だった。

 にもかかわらず、3月に入ってもキンブレルの球団は決まっていない。昨年12月に「1億ドルのクローザーが誕生するのか。現在の最高額は、チャップマンの5年8600万ドル」で書いたとおり、キンブレルの希望は6年契約らしい。2月下旬には、FAのまま今シーズンを過ごすことも辞さないつもりだと報じられ、キンブレルの代理人がそれを否定する一幕もあった。前者をツイートしたのは、シンシナティ・レッズとワシントン・ナショナルズでGMを務めたジム・ボウデンだ。後者は、FOXスポーツのケン・ローゼンタールがツイートした。

 ただ、今シーズン、キンブレルとスネルがチームメイトになることは考えにくい。理由は簡単、レイズは貧乏球団だ。キンブレルが長期契約をあきらめた場合、それだけになおさら、年俸は高くなる。

 スネルの望みが叶えば、キンブレルには先発登板の可能性もあった。昨シーズン、レイズで最多の25セーブを挙げたセルジオ・ロモは、通算589登板目の初先発を皮切りに、「オープナー」として5試合に投げた。すでに、ロモはレイズにはいない。キンブレルと同じようにFAとなり、1年250万ドルでマイアミ・マーリンズに入団した。ちなみに、ロモには及ばないものの、キンブレルもこれまでの542登板はすべてリリーフだ。

 キンブレルの契約先として、現時点で最も有力なのは、ナショナルズだろう。ブライス・ハーパーを引き留めるため、ナショナルズは資金を用意した。だが、ハーパーはナショナルズには戻らず、同じナ・リーグ東地区のフィラデルフィア・フィリーズと契約した。キンブレルを迎え入れても、その資金は3分の2以上が残るはずだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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