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大谷翔平がいないローテーション。ダークナイトとグラウンドボーラーが加わっても不安は拭えず

宇根夏樹ベースボール・ライター
マット・ハービー Sep 14, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ロサンゼルス・エンジェルスが、立て続けに先発投手を手に入れた。FA市場に出ていたマット・ハービートレバー・ケイヒルの2人と、それぞれ1年1100万ドルと1年900万ドルの契約を交わした。

 彼らの加入により、先発投手の頭数は揃った。アンドルー・ヒーニーハイメ・バリーアタイラー・スキャッグスの3人に、ハービーとケイヒル。さらに、フェリックス・ペーニャニック・トロピアーノもいる。4月にトミー・ジョン手術を受けたJC・ラミレスも、うまくいけば、シーズン半ばに復帰する。

筆者作成
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 数年前までプロスペクトだったヒーニーとスキャッグスが真価を発揮し、バリーアが2年目のジンクスに嵌らなければ、まずまずのローテーションが形成される。ハービーは5月にシンシナティ・レッズへ移籍後、速球のスピードを取り戻した。ケイヒルは数多くのゴロを打たせる、グラウンドボーラーだ。

 とはいえ、ヒーニーとスキャッグスは故障が多く、2018年を除くと120イニング以上のシーズンはない。ケイヒルも、ここ5シーズンはいずれも120イニング未満。ハービーが低迷するニューヨーク・メッツの救世主として期待され、「ダークナイト・オブ・ゴッサム」のキャッチフレーズとともにスポーツ・イラストレイテッド誌の表紙を飾ったのは、5年前のことだ。2018年はレッズで復活の兆しを見せたものの、24先発で記録した奪三振率は7.80に過ぎず、防御率も4.50だった。

 オレンジ・カウンティ・レジスターのジェフ・フレッチャーらによると、エンジェルスはもっと大物の先発投手、パトリック・コービンネイサン・イオバルディと交渉していたという。J.A.ハップも噂に上っていた。だが、コービンはワシントン・ナショナルズに入団し、イオバルディはボストン・レッドソックス、ハップはニューヨーク・ヤンキースと再契約を交わした。

 エンジェルスでは、マイク・トラウトがあと2シーズンでFAになる。球界最高の選手と延長契約を結ぶため、FAに対して金を出し惜しんだのだろうか。あるいは、トラウトの退団――エンジェルスが放出するにせよ、引き留めに失敗するにせよ――によって再建に舵を切る可能性のあることが、大物投手を逃した理由かもしれない。再建を進める球団で、ポストシーズンとは無縁のまま全盛期を過ごしたい投手はいないだろう。

 もう一つ、懸念されるのが大谷翔平の存在だ。大谷は2020年から、再び二刀流選手としてプレーするはずだ。そうなれば、ローテーションは5人ではなく6人となる。MLB.comのデーブ・セッションズらによれば、今春、テキサス・レンジャーズにいたコール・ハメルズ(現シカゴ・カブス)は、6人制のローテーションでは投げたくないと語ったという。ハメルズの他にも、そう思っている投手がいてもおかしくない。

 ただ、基本的に中6日で投げていた菊池雄星にとっては、5人制のローテーション(中4日)よりも6人制のローテーション(中5日)の方が、これまでの登板間隔に近い。エンジェルスは、投手・大谷が不在の2019年も、他の先発投手の故障歴と2018年に投げたイニングからすると、6人でローテーションを組むことに無理はない。ハービーとケイヒルは1年契約なので、投手・大谷が復帰する2020年に、先発投手が余ることもない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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