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マリナーズは「わらしべ長者」に!? スラッガーを放出したトレードで、よりパワフルなスラッガーを獲得

宇根夏樹ベースボール・ライター
エドウィン・エンカーナシオン(左)とカルロス・サンタナ Sep 6, 2017(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 シアトル・マリナーズが三角トレードを成立させ、10日前にフィラデルフィア・フィリーズから獲得したカルロス・サンタナをクリーブランド・インディアンズへ放出し、インディアンズからエドウィン・エンカーナシオンを獲得した。

筆者作成
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 サンタナは、ここ3シーズンに平均27.0本のホームランを打っている。それに対し、エンカーナシオンは平均37.3本だ。どちらも一塁手&DH。出塁率は.360と.357なので、ほとんど変わらない。

 ちなみに、サンタナを獲得した際にフィリーズへ放出したジーン・セグーラ――こちらは一塁手ではなく遊撃手――は、平均13.7本塁打&出塁率.353だ。

 ただ、エンカーナシオンは35歳。サンタナ(32歳)とセグーラ(28歳)より年上で、再建にはまったくそぐわない。

 サンタナとエンカーナシオンは、ともに3年6000万ドルの契約を持っていて、来シーズン、サンタナはその2年目、エンカーナシオンは最終年を迎える。それぞれ、残りの金額は3500万ドルと2500万ドル。今回のトレードで、マリナーズはインディアンズへ600万ドルを渡し、タンパベイ・レイズから500万ドルを受け取る。その分を含め、負担する金額を900万ドル減らした。2500万ドル+600万ドル-3500万ドル-500万ドル=-900万ドルという計算だ。マリナーズはインディアンズから、来年のドラフト指名権も得た。これは、全体80位前後となる見込みだ。

 さらに、この動きには続きがありそうだ。ブリーチャー・レポートのスコット・ミラーとタンパベイ・タイムズのマーク・トプキンが、マリナーズはエンカーナシオンをレイズへ放出するだろうとツイートしている。

「わらしべ長者」さながら、マリナーズはエンカーナシオンと交換に彼以上のスラッガーを手に入れる……のではない。ここ3シーズンにエンカーナシオンより多くのホームランを打っている打者は4人いるが、3人はレイズ以外の球団に在籍し、残る1人はマリナーズからFAになったネルソン・クルーズだ。現在のレイズで最もパワーのある打者は、マイク・ズニーノだろう。11月のトレードで、ズニーノはマリナーズからレイズへ移籍した。

 マリナーズは若手を集めるとともに、これから支払う金額を減そうとしている。ロビンソン・カノーをニューヨーク・メッツへ放出したのも、狙いはそこにあった。このトレードについては「ブロックバスター・トレードがもうすぐ成立するが、あのビッグ・ネームは主役ではなく、むしろお荷物!?」で書いた。資金に余裕ができれば、再建からポストシーズン進出という収穫へ向かう時に「ラスト・ピース」としてベテランを加えるのに費やせる。あるいは、再建直前にFAとなる選手を引き留めるのにも使える。

 なお、「コストカッター」のカルロス・ゴーンは拘置所にいるが、同じカルロスでもゴーンではなくサンタナを放出した際、マリナーズのジェリー・ディポートGMも意外な場所にいた。ウィンター・ミーティング中に体調を崩し、シアトル・タイムズのライアン・ディビッシュによると、GM補佐の助けを借り、病院のベッドからトレードをまとめたという。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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